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第13回:物流共同化の視点と課題 -物流共同化を考えるvol.1-

2024年04月10日/コラム

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物流におけるサービス向上とコスト削減

物流の大きな課題に、「顧客サービスの向上」と「物流コストの削減」がある。これは、顧客サービスの向上が、リードタイムの短縮や欠品率の減少などを通じて、売り上げ拡大につながるからである。また、物流コスト削減が、原材料費や生産費用の削減とともに、利益の拡大につながるからである。しかし、顧客サービスを向上させれば物流コストが増加するように、両者の間にはトレードオフ(両立しない関係)が存在する。

顧客サービスについては、前回のシリーズ(第7回~第12回)で考えてみた。今回(第13回)からは、物流コスト削減と物流効率化の代表的な方法とされている「物流共同化」について取り上げることにする。

共同物流の定義と2つの視点

共同物流という用語は、JISZ0111で定義されており、「複数の企業が、物流業務の効率化、顧客サービスの向上、交通混雑の緩和,環境負荷の軽減などのために、物流機能を共同化すること」とされている。

物流共同化は、長年議論されている古くて新しいテーマであるが、それだけ実現へのハードルが高いということでもある。だからこそ、物流共同化が抱えている問題を探り、導入のための課題を明らかにする必要がある。物流共同化には多様な側面があるが、ここでは幅広く「物流機能」「調達、生産・在庫、販売」の2つの視点から、物流共同化を考えてみる(表1、図1)。

物流機能からみた物流共同化

第1の「物流機能」から物流共同化をみたとき、輸送機能では、共同輸配送、共同集荷などがある。共同輸配送や共同集荷は、複数の荷主の貨物を積合せることになるため、荷主が主導する場合でも、実際の運行は基本的に物流事業者が担うことになる。そして、物流事業者による輸配送には、貸し切りと積合せがある。いささか乱暴な例えだが、前者がタクシーで後者がバスという感覚に近い。

消費者に身近な宅配便は、積合せ貨物の一種であり、発荷主も着荷主も誰の貨物と一緒に運ばれているかに興味はない。だからこそ、積合せ貨物は、そもそも共同化されているという考え方もある。一方、貸し切りの場合、リードタイムや到着時刻は荷主の要求に従うことになる。それゆえ、共同輸配送を進める場合も、荷主の意向を尊重しなければならない。

<表1 物流共同化の2つの視点>
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調達・生産在庫・販売からみた物流共同化

第2の「調達、生産・在庫、販売」から物流共同化をみたとき、共同調達には、ミルクラン(巡回集荷、発注者が複数の納入業者を巡回して集荷する方法)や、統合納品(複数の納品業者に共同配送センターに納品してもらい、品揃えをしてから一括して納品する方法)などがある。

共同生産在庫のうち、生産ではOEM(相手先ブランドでの生産)や委託生産などがあり、在庫ではVMI(納入業者主導の在庫管理)やCRP(連続自動補充)などがある。共同販売では、共同輸配送、販売先の委託(農協など)などがある。

<図1 荷主からみた物流共同化の種類(取引先、同業他社、協力会社)>
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物流共同化に影響を与える商品特性(3T)

物流共同化には、扱う貨物の商品特性が大きく影響する。代表的な商品特性には「3T 」として、時間・時刻(Time:リードタイム、出荷時刻、納品時刻など)、温度(Temperature:常温、冷蔵、冷凍など)、物性(Tolerance:重量、容積、壊れ物など)がある。そして、鉄とサンドイッチの共同輸送は例が無いように、一般的には、商品特性が異なると共同化が難しいとされている(表2)。

しかし近年では、異なる商品特性の貨物の共同化も少しずつ増えている。たとえば、時刻や温度などの条件を調整したうえで、最大積載重量と最大積載容積の両方を有効に利用するために、重量物(例、飲料品)とかさ物(例、お菓子、容積が大きく軽い商品)を組み合わせている例もある。

<表2 物流共同化に影響を与える商品特性(3T)>
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物流共同化の壁を越えるために

物流共同化を阻むものとして、しばしば「着荷主の要求や意向」が指摘されている。しかし、着荷主の要求や意向に応じることは、「顧客サービスの向上」という意味で、避けられない面がある。また、「物流事業者<発荷主<着荷主」というビジネスでの力関係から、尊重せざるを得ない面もある。このため、着荷主の了解が無ければ、顧客サービスの見直しをともなう共同輸配送の導入は難しいということになる。

一方で、多くの荷主企業(メーカー、卸小売業など)では、販売物流(製品や商品の販売)と、調達物流(物資や商品の仕入れなど)の両方が存在している。そして、発荷主として「着荷主への顧客サービスの調整(例、リードタイムの延長など)」を含め、「販売物流で多くの経験と工夫」を重ねてきたことだろう。

ならば、「販売物流での経験と工夫を、自らが着荷主となる調達物流にも活かせるはず」と思うのである。物流共同化というと、ついつい販売物流を意識しがちであるが、販売物流における着荷主の行動を「他山の石」とし、自らが着荷主となる調達物流の改善に反映させても良いだろう。このように考えることができれば、調達・生産在庫・販売を通じたサプライチェーンの効率化にもつながるものと思っている。

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