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導入継続が実証するラピュタの力
自動フォークリフトにも挑戦

2022年10月11日/物流最前線

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物流現場の自動化について必要性が叫ばれ続けている昨今、多くの物流ロボットが台頭する中で導入実績を上げ続けているロボットがある。ラピュタロボティクスのピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」だ。人と協働し、既存の物流現場でもオペレーションを止めずに導入できるこのロボットは、佐川グローバルロジスティクスや日本通運、アスクルなどの企業で採用されており、その評判から採用件数が急増している。ラピュタロボティクスの創業者であるモーハナラージャー ガジャンCEOと、森 亮 執行役員に、同社の戦略や今後の展望を伺った。
取材:8月29日 於:ラピュタロボティクス木場支社

<ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」>
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<モーハナラージャー ガジャンCEO>
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<森 亮 執行役員>
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費用対効果保証は「確信が持てるから提供できた」

――  ラピュタPA-AMRの採用状況は。

ガジャン  佐川グローバルロジスティクスや日本通運、アスクル等の企業で合計200台弱が採用されています。月間3件ペースでどんどん採用が増えている状態ですね。

――  アスクルの物流センターで大規模な導入がありました。どのような点が評価されたのでしょうか。

ガジャン  アスクルさんからは、稼働済みの物流現場に対して大規模な自動化設備を入れるとオペレーションが止まってしまうので、それは難しいという話がありました。そこに、現場を止めずに導入できるラピュタPA-AMRがマッチしたということだと思います。アスクルさんの物流現場にはすでにGTP(Goods To Person)システムなどで大規模な自動化を行っている拠点もありますが、ラピュタPA-AMRは柔軟性を求められるような現場と相性が良いので、そこはすみ分けだと思うんですよね。かちっとした形で自動化したい場合にはGTPがいいかもしれないですし、柔軟性や汎用性を持っておきたいケースではラピュタPA-AMRのようなソリューションが有効なのではと思います。

――  既存の物流現場に導入できる強みが生きた事例ですね。

ガジャン  そうですね、一般論でGTPシステムのような設備を導入している現場があっても、全てのピッキング作業がその単位で完結するわけでもないんですよね。その領域外の商品も結構ありますし、理論的には同じセンターでも違うロボットを入れて適材適所にしていくというのは大いにあり得ると思います。

――  加速度的にユーザーを増やしてきた背景には、どのような取り組みがあったのですか。

  その点ではさまざまな取り組みを進めてきました。2022年初頭に資金調達をしているのですが、その理由の一つがより多くの顧客にラピュタPA-AMRを使ってもらえる体制を作るというところなんですね。調達した資金はR&Dにも投入しましたが、顧客にサービスを届けるためにはやはりマーケティングやセールス、サポートの人間が必要になってくるので、そこを急ピッチで拡充してきました。

採用事例が蓄積されてきたということも、ユーザーが増加した大きな要因です。例えば佐川グローバルロジスティクスさんでは1拠点目での運用実績を踏まえて2拠点目の導入もされていて、そうした事例を他の顧客が見て「どうやら本物だ」と感じて声を掛けてくれるようになってきました。あとはアスクルさんでしっかりと結果を出せた辺りから、最近は顧客のトーンが変わったなと実感しています。信頼の積み重ねがさらなる採用につながっているという状況ですね。

<アスクルの物流センターで稼働するラピュタPA-AMR>
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――  導入障壁を下げるための取り組みにも注力していますね。

  われわれから見ても、顧客が新しい技術の導入に踏み出しにくい環境にあるということはすごく認識していました。相手の立場に立ってみると、なにか新しいロボットがあっても現場に導入したうえで結果が出るかどうか分かりませんし、リスクを払ってそれを導入するのはなかなかに大変だと思います。そこで、われわれでは1か月半の間、本導入と同じレベルでラピュタPA-AMRを活用し、倉庫への適合性や生産性の向上度合いを体験できる「体験『本』導入プログラム」や、導入後の生産性に応じて料金が変動する成果連動型の料金体系を採用した「費用対効果保証プログラム」といった、今までロボット屋としては怖くてできなかったようなことを、ガジャンと経営陣が腹を決めてアグレッシブにやってみました。

――  かなりチャレンジングな試みだと思いますが、どのような着想から生まれた取り組みなのですか。

  顧客がラピュタPA-AMRを導入するにあたって、どんな障害があるのかを全て書き出していったんです。そうした障害のうち、われわれがどこに寄り添っていけるかをガジャンやアルル、ビジネスチームのメンバーが話し合いました。まず「体験『本』導入プログラム」については、導入に対してまずはテストしたいとか、自社の現場で動くかを見たいというニーズに応えたもので、これでしっかりと顧客の期待に応えることができたので、次はいざ導入するという段階になって出てくる費用対効果の不安に対して何らかの保証を付けたいということになりました。

費用対効果を補償することに関してはかなりリスクがありますが、これまでにさまざまなパターンの現場も見てきましたし、導入の事例も蓄積できています。それに、何よりもわれわれは「ロボットシミュレーター」というロボットと同じソフトウエアをバーチャル空間で運用し、対象倉庫のレイアウトや1日のオーダーを入れ込んで、どの程度のパフォーマンスが出るのかを計測できるシステムを持っていて、導入効果を事前に予測できたというのも大きいですね。

――  それにしても、余程の自信がないとできない取り組みですよね。

  そうなんです、自信と勇気ですね(笑)。たくさんの導入実績があって、それが全て成功している。確信を持てるから、このサービスを提供していこうとなったわけです。費用対効果については、かなり昔から顧客からの声としてあったんですよ。「パフォーマンスが出なかったらどうするんですか」という質問は必ず聞かれますし。ですが、やはり効果を保証するというのは、余程自分たちにも見込みがないとできないことで、ようやくギリギリできるようになったので踏み込んでみたという感じですね。

ガジャン  ピッキングアシストロボットというのは、比較的にパフォーマンスが分かりにくい商品なんですよ。そういったところも理由としてあるんですね。例えば自動フォークリフトを導入するとフォークマンがいなくなる、といった分かりやすい効果があるじゃないですか。ですが、ピッキングアシストロボットは導入しても作業者が必要ですし、導入することで現場のパフォーマンスがどの程度上がるというのはパッと見て分からないですよね。でもソリューションを作っているわれわれは分かっているはずなので、そのリスクをうちが取るべきじゃないかと考えたわけです。

――  効果は使っていく中で実感してもらえばいいと。

  そうですね。メディアなどで情報を見たり想像しても、実際に自分の倉庫で動くのかどうか、そもそもどうやって現場のオペレーションを支えるのかといったことは分からないじゃないですか。それをなるべく早く理解してもらうためには、まず見て、使ってもらうのが一番なのかと思います。

――  今後さらに導入障壁を下げるには、どのような取り組みが必要だと思いますか。

  サービス提供の形として、少し斬新な案を考えてみたいと思っています。方向性としては、ソフトウエアのSaaS(Software as a Service)のような形ですね。今は売り切りに加えてRaaS(Robot as a Service)というものが登場していますが、RaaSも最低契約期間があってすぐには解約できません。やはり物があるが故の制限があるんですよね。SaaSにはフリーミアムという言葉がありますが、使ってもらって「あっこれはいいな」と思ったら有料に切り替えてもらうような仕組みであるとか、方向性としては徐々にSaaSへ近づいていくのだろうと感じています。本当はそういった形が一番理想なんですよね。ただ、どうしても物体的な制約もあるので、そこに近づけるために「体験『本』導入プログラム」や「費用対効果保証プログラム」といったものをやって、なるべく近づこうとしている訳です。

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