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導入継続が実証するラピュタの力
自動フォークリフトにも挑戦

2022年10月11日/物流最前線

20221011 raputa07 - 物流最前線インタビュー/導入継続が実証するラピュタの力

2023年にも自動フォークリフト提供へ、製品の米国展開も

――  今年に入って他社との業務提携を積極化しているようですが、その狙いは。

ガジャン  一つは販売チャネルの拡大です。われわれも営業部門は持っていますが、今以上に人員を増やすよりもパートナーの力を借りた方がよりスピーディーに販売促進ができます。もう一つはロボットのサポート体制を拡充するためです。全国に顧客がいますので、そのためのパートナーも探しています。パートナーのなかには、ロボットの販売もサポートも両方行っている企業もいれば、サポートだけに特化している会社もいます。われわれはソフトウェアの開発に注力したいということもあって、販売やサポートのほか、ハードの製造などもパートナーに協力してもらっています。プラットフォームの考え方ですね。パートナー企業と組むことで、これほどのスピードで事業が拡大できているのだと思います。

  1社だけで何かをするということは、ロボティクスでは本当に難しいんですよね。無限にパターンがありますし、やはりパートナーシップが正しいやり方だと思います。自社だけでサービスを提供し続ける、製造し続けるというのは難しいので、販路やサービスの提供のためのオペレーション、あとは製品やサービスのラインアップを拡充するという点でも、まだ他社との提携はあるかなと思っています。

例えばトーヨーカネツさんの場合ですと、同社の搬送機器とラピュタPA-AMRを組み合わせた新たなソリューションを顧客に提案できるようになります。われわれが今提供しているのはラピュタPA-AMRですが、顧客のなかにはAMRを含めた倉庫全体のソリューションを必要としている方もいますので、そういう場合に協業関係が生きると思っています。そこはまだ、われわれとしてはあまり力を入れられていない領域なので、可能性があると思っていますね。

――  今後の展望をお聞かせください。ラピュタPA-AMR以外のロボットを供給する計画はあるのでしょうか。

ガジャン  現在、自動フォークリフトの提供に向けて開発を進めているところです。ラピュタPA-AMRはピースピッキングに対応したロボットですが、倉庫ではパレット単位で扱う荷物もあります。そこにはフォークリフトが適しているのではないかと思っていて、AMRとはすごくシナジーがあるんです。マーケティングの面でも、AMRの顧客に提案できますし、システム的にもrapyuta.ioと顧客の倉庫管理システムとの連携はすでに取れているので、同じシステムで運用できます。ラピュタPA-AMRを運用している現場であれば、ほかのメーカーの自動フォークリフトを導入するよりも、われわれの製品を入れた方が早く拡張できるのでシナジーは高いですね。

  rapyuta.ioの強みは異なるロボットの協調制御です。今はピッキングアシストロボットが主力製品ですが、ロボットのニーズはほかにもあるので、ほかのタイプのロボットを現場で提供して、それがうまく連携するとより価値が出るというところで、われわれの技術的な親和性とニーズがすごくマッチしているのではないかと感じています。

――  アーム型のピッキングロボットについてはどうお考えですか。

ガジャン  それについては、現時点では考えていないです。理由としては、物流の現場では扱う物が多種多様で、速度の要求もすごく高いからです。この要求を現在のアーム型ロボットでは技術的に満たせていないんですよ。これからロボットの研究が進んでからで、実用化はあと5年後くらい先になると思います。

――  しばらくは人とロボットが協働する形がベストということでしょうか。

ガジャン  そうですね。今は人の下半身の部分、要するに運搬などはロボットで簡単にできますが、上半身の特に手や指周りはもっと技術が進歩しないといけないし、技術が進歩したとしてもコストがまだ高いので、そこの課題がクリアできてはじめてという感じです。

  補足すると、工場などで稼働するような産業用ロボットアームだと速く動かせる製品はあるのですが、人と協働できるロボットとしては、同じようなスピードを出すことがなかなか難しいということです。

ガジャン  製造現場は扱うものがしっかりと決まっているので、設計した通りに速く動かせるんですね。でも物流現場だとSKUの数や品物の数、形状が非常に多いので、それらをロボットで速くピッキングするのはなかなか難しいですね。ピッキング作業者も、商品を取るだけではなくて、箱を開けたり、空箱をよけたり、そういった付属する作業も行っているので、そこを全部できないうちは人が作業したほうがいいですよね。

――  6月にこちらのオフィス(木場支社)を拡大してR&Dの機能を強化しました。今後の開発で注力する部分は。

ガジャン  まずはラピュタPA-AMRのROIを上げる必要があると思っていて、アルゴリズムを改善するなど1台あたりの生産性を上げていきたいですね。あとは、各ロボットの運用コストをどう下げていくかも重要です。今は顧客の現場へ出向いていますが、今以上に導入件数が増えていくとなかなか難くなるので、リモートで管理やサポートをするなどの仕組みを入れていこうと思っています。顧客のROIを上げて、かつコストを下げるような開発のアルゴリズムやツールを開発するというのが一つの大きな方向性ですね。もう一つは自動フォークリフトをいかにマーケットに早く出すかといったところで、開発スピードを加速させています。開発は順調に進んでいて、2023年の中頃あたりには公開できるかなと思っています。

――  自動フォークリフトを開発するうえでのポイントは。

ガジャン  フォークリフトならではの問題は大きく二つですね。一つは大型の機械なので安全を第一にしないといけません。AMRもまだ人や物にぶつかったというクレームは出ていませんが、例えぶつかったとしてもまだ多めに見てもらえますが、フォークリフトではそれが通用しないので安全性を重視して開発しているというのが一つですね。

もう一つは、パレットを扱わないといけないことです。ラピュタPA-AMRは人が物を入れて運びますが、フォークリフトはパレットを取る動作があるので、しっかりとパレットを認識しないといけません。パレットの形はある程度標準化されていますが、なかには穴の部分まで梱包材が巻かれた状態のものなどエッジケースがあるので、そういったものでもちゃんと扱えるようにする必要がありますね。

――  自動フォークリフトの提供は他社でも始まったばかりです。いち早く参入できればその後のシェア獲得にも大きく影響しますね。

ガジャン  そうですね。有人のフォークリフトはストックベースで8万台以上になるかと思いますが、それに比べて毎年売られている自動フォークリフトは200台程度なので、しっかりと良い製品を作って柔軟性やコストを押さえておけば、マーケットとしては結構あると思うんですね。それに、自動フォークリフトは今ある有人フォークリフトと入れ替えるだけなので、ピッキングアシストロボットと比べて売りやすいですし。

  物流の現場へ行くとフォークリフトを使っていない現場はほとんどないですよね。販売するうえでの間口の広さも自動運転フォークリフトを製品化したい理由の一つです。ラピュタPA-AMRとのシナジーもありますので、既存の顧客から提案していこうと思っています。

――  今後、海外での事業展開についてはいかがお考えでしょうか。

ガジャン  今、ラピュタPA-AMRの米国展開に向けて数名体制で動き始めているところで、来年には本格的に始動する予定です。

――  米国ではラピュタPA-AMRのようなソリューションは少ないのですか。

ガジャン  いえ、競合はすでにありますが、米国は市場が大きいので比較的参入しやすいと思っています。特に今、日本の倉庫で働いている方の時給は1300~1600円の間ですが、米国は20~25ドルで日本の倍になってるんですね。ですから、ラピュタPA-AMRを持っていけば日本の倍の生産性が出ることになります。

――  中国は市場としてどうですか。

ガジャン  ラピュタPA-AMRに関しては、中国よりもう少し人件費が高い国のほうがいいと思いますね。ですので、やはり米国や欧州が市場としては良いと思っています。結局、ロボットは人件費との勝負になってしまうんですね。

  ラピュタPA-AMRは日本の物流に鍛えられていますので、おそらく米国で米国の倉庫物流向けに開発されたプロダクトよりは過剰なスペックになっている気がするんですね。そこが米国展開でのアドバンテージになるのではと、少し期待感を持っているところがあります。

――  メード・イン・ジャパンのブランド力が生きるということですね。

ガジャン  最近、メード・イン・ジャパンが結構評価されているらしいですね。ぼちぼち話に聞きますけど。

  若干よく言ってくれていると思いますけど(笑)。日本人としてメード・イン・ジャパンを信じたい願望は強くありますが、本当ならうれしいですね。

20221011 raputa08 - 物流最前線インタビュー/導入継続が実証するラピュタの力

■プロフィール

【モーハナラージャー ガジャン CEO】
スリランカ出身、東京工業大学にて学士・修士号(工学)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校にて博士号(工学)取得。在学時には、EU出資のプロジェクト「RoboEarth(ロボアース)」にて、ロボット向けのインターネット「Rapyuta」を構想・開発。現在は、クラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」や、物流現場のDXを支える協働型ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」等のソリューションを提供するラピュタロボティクスの代表取締役CEOを務める。運動が好きで、趣味のロードバイクでは今年のゴールデンウィークに5日かけて東京から大阪まで走破。また、サッカーではスリランカ選抜として活躍した経験がある。

【森 亮 執行役員】
米国ノースカロライナ大学にて経済学士、UCLAにてMBAを取得。モルガンスタンレー証券をはじめ金融業界で活躍後、Googleに入社しアジア・パシフィック地域のマーケティングプログラムを統括。2017年にラピュタロボティクスに入社以降、執行役員としてビジネス部門を統括。趣味はバスケットボールで、出身大学はマイケル・ジョーダンがプレイした全米No.1のバスケットボールの強豪校である(主観)。

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