導入企業の継続使用率100%
―― ガジャンCEOはKiva Systemsの創業者に師事されていたことがあるそうですが、同社とは異なる形の物流ロボットを提供しようとした理由は。
ガジャン 先生にはよく「マーケットに適したものを作らないといけない」ということを言われていました。ラピュタロボティクスの創業時には、Kiva Systemsをはじめ、インドのGrey Orangeや中国のGeek+などがGTPのシステムを作っていましたが、GTPには、導入するにも大規模な投資が必要であったり、現場のオペレーションを完全に止めないと導入できないなど、多くの課題がありました。
それに、物流業界では新規倉庫や大型倉庫以外に中小規模であったり既存の倉庫も結構多く、これらは特に日本で大きい割合を占めていたので、そうした倉庫に適したロボットソリューションとして最適なものを検討した結果、現場を止めずに導入できて、価格もAGVよりも1桁小さいことから、現在のピッキング作業を支援するロボットというコンセプトに行きついたわけです。
―― なぜ日本で物流ロボットの会社を立ち上げようと思ったのですか。
ガジャン 少し前の話をすると、僕ともう一人の創業者であるアルルが2人ともスリランカ出身で、高校を卒業してから日本の文部省の奨学金を得て20歳の時に日本へやってきました。2人とも東工大で勉強していて、いったん僕は博士課程のためにスイスのチューリッヒ工科大学へ行き、アルルはアメリカで金融工学を学んだという経緯があります。日本は2人が20代の全てを過ごした地で、第2の母国のようなものでしたし、会社を設立した当初の投資家や顧客が日本にいたので、それが日本で起業したきっかけです。
もちろん、マーケットの観点からも理由があります。日本は他国に比べて高齢化が進んでいます。他国ではまだ「ロボットが来ると仕事が奪われる」という認識が多いのですが、日本ではロボットが1日も早く実用化されてほしいというマインドセットなので、しっかりとニーズもありました。加えて、われわれはさまざまなロボットをクラウドにつないで動かすということをしていますので、ネットワーク環境がしっかりと整っていたことも重要でした。
―― 物流のロボットに着目したきっかけは。
ガジャン 起業当初は物流ロボット以外にもいろいろと試していたものがありました。2017年頃まではドローンを遠隔で飛ばしてプラントを監視するシステムなどを開発していました。さまざまなものを模索していく中で、物流にロボットのマーケットがあるということが分かりました。
―― 他社でも同様のピッキングアシストロボットが展開されていますが、御社の強みは。
森 複数種類のロボットを群制御できることがわれわれの強みです。効率的に複数のロボットを動かすという点では、かなりのアドバンテージがあると思っています。われわれの提供しているロボット制御プラットフォーム「rapyuta.io」はそういう思想で作られているんですよ。これまで研究開発を積み重ねてきたものがあるので、ロボットの動きの質はかなり違うと思っています。
もう1点、他社との明確な違いは導入実績です。ロボットで重要なことは、現場へ導入した後に継続して運用できているか、これに尽きるんですよ。今は現場の人手不足への対応が喫緊の課題なので、テクノロジーに対するニーズが世の中で高まっていて、意識が高い企業は「なら試しに導入してみよう」という発想になりやすい環境にありますが、導入したとしても、本当に使われているかというのがそのソリューションに価値があるかを示している部分だと思っています。現時点で「ラピュタPA-AMR」は全ての導入企業に使用を継続して頂いているという状態です。
これはすごく大きなことだと思っています。ロボットソリューションではPoC(概念実証)やトライアルに膨大な時間やコストをかけても、その後が続かないという、いわゆるPoC地獄という状態に陥りがちで、そこをいかに乗り越えるかがポイントなんです。乗り越えるためには現場でどれだけ価値を出しているか、ロボットの技術力だけではなくてソリューションとしての質が問われるところだと思っています。
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