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新たなスタンダードの創造
意識改革は実体験を重ねること

2022年12月13日/物流最前線

20221205hashiglp3 icatch - 短期集中連載/日本GLP 帖佐義之社長×橋下 徹 Vol.3

■高速道路網に見る大阪と東京の違い  Vol.1
■サプライチェーンの重要性を認識 Vol.2
■意識改革は実体験を重ねること Vol.3
■倉庫にオープンハブの概念を持ち込む Vol.4
■トップとしての心構えと行動 Vol.5

意識改革は実体験を重ねること

<2人の対談の様子>
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司会  意識を変えていくとか、そういったところを橋下さんはかつてどんなふうにされていたのですか。

橋下  意識改革はなかなか大変です。大体僕が言っていることが全部正しいわけでもありませんからね。僕が「意識改革を」なんて言っても、それはなかなか変わりません。あとは他の政治家のプレーを見て、これはなかなかダークだなあと思うのは、「私には聞く耳があるから何でも言ってください」といろんな人に言っていますけど。それが本当ならば現場からこのトップは聞く耳があるんだなということになりますが、現場からちょっとその人が気にさわるようなことを言った場合に「聞く耳持ちますから」と言っている人に限って、すぐに言ってきた人を左遷させちゃったりします。そういうことが多いから、みんな現場で萎縮するのです。だから僕は自分に聞く耳があるからとかどうこう言わずに、ちょっと職員に実体験をさせようと。

今までこんなことはできないだろうなと思っていたことを、実際に「やる」と。一つの事例ですが、大阪城に西の丸庭園というものがあって、大阪府職員たちはこの景観を守ることに命をかけていました。木を1本たりとも切っちゃいけない。芝生に傷をつけちゃいけないということで、ここでのイベントは全面禁止で60年やってきました。

<大阪城西の丸庭園 出典:大阪観光局HP>
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<モトクロス競技の様子 出典:red-bull HP>
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<大阪城をバックにしたモトクロス競技 出典:red-bull HP>
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ところがこれは付加価値が非常に高い空間なので、ここでイベントをやりたいという民間事業者から年間2万件も3万件も申請がありましたが、全部却下してきました。これを使おうということです。みんなここではイベントができないものだと思っているところで、ここで1回、大阪の力を結集すればこういうことができるんだということを示そうと。そういうことで戦略チームを集めて検討してくれと言ったら、チームは、60年間、今までやってこなかった最初の一歩だというので、本当に効果がありましたね。バーベキュー大会からいこうかとか、そんな話も来ました。僕はそこで「意識改革につながるようなもの、もう衝撃が走るようなもの、こんなところでこんなことまでやっていいのかということを、3万8000人の職員が思えるようなものでやってくれ」ということを言いました。そうすると、そこでいろんな議論が生まれ、税金を使わないことまで決まりました。そして、最後職員が決めたのが「モトクロス競技」でした。芝生を傷つけちゃいけないって言っていたから、どうなったんだと聞いたら、職員たちが「芝生を傷つけていません、全部剥がしましたから」と言って。これイベントが終わったら、民間のレッドブルがきれいに戻してくれました。

3日間貸し出すことで相当な賃料が入ってきました。芝の張り替え費用の3000万円分ぐらいを全部向こうが持ってくれて、3万人集まって。これはさっきのモトクロス競技ですが、世界遺産の場所ですよ。スフィンクスだったり、それこそクレムリンの赤の広場だったり。これを大阪でやったことから、世界に配信されますね。またその映像を見た外国人が「大阪キャッスルに行きたい」ということでどんどん集まってくるようになりました。コロナ禍前には、姫路城よりも人を集められる城になりました。

<トライアスロン競技の水泳飛び込みの様子 出典:大阪城トライアスロン大会事務局HP>
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これをやったら、大阪の職員たちが「ここまでやっていいのか」という気持ちになって。そうなったらしめたものです。元々優秀な職員たちですから、次はトライアスロンをやりたいと。走ることはわかる。自転車に乗ることもわかる。大阪城でね。でもどこで泳ぐんだと。そうしたら、ここです、お堀ですと。君達、遊泳禁止ってこの間まで言っていたじゃないかって。そうしたら、水質検査をやったら大丈夫でしたと。ただ、環境何とか課の職員が言っていたのが、こういう外来種のアリゲーターがいますと。歯が小さいので、かまれてもちょっと足が赤くなるだけだから、あとは何とかしますと。もうそういう意識になったんですよ。言葉で意識改革とか変革だとか、俺には聞く耳があるからどんどん言ってくれというのじゃなくて、もう実体験をさせてしまう。その実体験も、ちょっとした実体験、アーリースモールサクセスということをよく言われていて、とにかく早く、小さい成功を積み重ねること。それも重要ですが、僕はもう爆撃、巨大な爆弾を落とすというやり方を組み合わせて、みんながここまでやっていいんだという衝撃を走らせると、優秀な職員はどんどんそういう意識改革を進めてくれたというのが僕の経験でしたね。

帖佐  最高ですね。こういうのは本当にいいと思いますね。固定観念の恐ろしさというか、職員の方々に、「じゃあどうしてダメなの」と聞いたら、60年そうだったからとか、そういうものだからとか、それでは理由になっていないですよね。

橋下  そういうことです。

帖佐  おそらく当時のルールを作った人は、それなりの理由があって、当時の時代に照らし合わせると正しかったルールが、そこから60年が経って、もう時代が変わっているのに、後生大事にそれを踏襲してきた人たちが「そういうものなんですよ」と言っているだけなんですね。たいした理由はそこにはないわけです。なのに変われないというそのもどかしさですよね。

Vol.4■倉庫にオープンハブの概念を持ち込む、に続く

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