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新たなスタンダードの創造
高速道路網に見る大阪と東京の違い

2022年12月06日/物流最前線

20221129glp1 icatch - 短期集中連載/日本GLP 帖佐義之社長×橋下 徹 Vol.1

日本GLPは11月9日、大阪市のヒルトン大阪で「GLP Conference in OSAKA」を開催したが、そのプログラムの一つに橋下 徹元大阪府知事、大阪市市長による基調講演として、「橋下流・現状打破の鉄則」-世界的中継都市をめざす大阪における物流業界への期待と展望-をテーマに講演が行われた。次いで日本GLP 帖佐義之社長と橋下 徹元大阪府知事、大阪市市長の「新たなスタンダードの創造」と題したパネルディスカッションが行われた。

■高速道路網に見る大阪と東京の違い  Vol.1
■サプライチェーンの重要性を認識 Vol.2
■意識改革は実体験を重ねること Vol.3
■倉庫にオープンハブの概念を持ち込む Vol.4
■トップとしての心構えと行動 Vol.5

Vol.1 

高速道路網に見る大阪と東京の違い

<橋下 徹元大阪府知事、大阪市市長>
20221129glp2 - 短期集中連載/日本GLP 帖佐義之社長×橋下 徹 Vol.1

<日本GLP 帖佐義之社長>
20221129glp3 - 短期集中連載/日本GLP 帖佐義之社長×橋下 徹 Vol.1

<GLP ALFALINK茨木・尼崎>

まず、司会者が、今回のパネルディスカッションのテーマが『新たなスタンダードの創造』とし、これまで常識をくつがえし、日本の政治、そして日本の物流施設開発のための新たなスタンダードを築いてきた2人を紹介。そして、「その活動の原動力、発想などのお話を伺いたい。最初に、今回発表の日本GLPのアルファリンクについての構想について、橋下さんはどのような感想をもたれたのか」と質問し、ディスカッションのスタートを切った。

橋下  めちゃくちゃ嬉しかったですよ。大阪を物流拠点にしたかったので。とにかく、大阪、関西は高速の道路計画がひどい状況でした。皆さんご存じのとおり東京はすごいです。世界の都市戦略での共通点は、高速道路の計画というものは、まず放射線状に高速道路を通します。1拠点から地域拡散するわけですね。

でもそうすると、真ん中に車が全部集まってくるので、そこを環状の通貫道路で、その中心地に集まらないようにする。ものの見事に東京ではこういう高速道路網ができています。これって50年間、60年間かけてこの計画を実行してきましたね。また後でお話したいと思いますが、これがなぜできたかというと、東京都が強力なリーダーシップを発揮しているからです。

かつて東京は、東京府と東京市というように府と市に別れていました。ところが1943年、東条英機が閣議決定で府と市を一つにまとめて東京都にしたのです。日本は戦争に負けましたけれども、東条英機が行った一つの仕事の成果としては、この東京の府と市を一つにまとめたこと。これは大きな仕事だと僕は思っています。このことによって東京は府と市で争うことなく、しかも強力なリーダーシップを発揮して、さっきの高速道路網みたいに、関東一円の高速道路計画を国と一緒に進めていったんです。

<東京と大阪の高速道路の違い 出典:近畿地方整備局P、関東地方整備局HP>
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ところが大阪ですが、もうバラバラですよ。これはなぜかというと大阪府、大阪市、これがまた自分たちの利益になるようなことばかりで。兵庫県、神戸市、それから堺市、京都市、奈良市。もうみんなが好き勝手なことを言って、高速道路がむちゃくちゃになってしまった。赤色のところは淀川左岸線の延伸部で、その前に中間点は大阪市都市再生環状道路がありますけれども、その大型環状道路を大和川線、それから湾岸線、既存の近畿自動車道を使って中型の環状線というものを作って、ここまではできましたが、赤色のところがどうしても進まなかったんです。

なぜかというと、この赤色の真ん中のところに大阪府と市の境界線があるんですね。大阪市との境界線になっています。そこで大阪府と大阪市は所管が違うということで、もうこれ、もめにもめ倒して赤色のところは進まなかったところです。最終的には僕と松井さん、僕は大阪市長に転じて、松井さんが大阪府知事になったところで、府と市で折半、お金は半分ずつ出そうということで、この淀川左岸線も計画決定できましてね。何とかこの環状道路ができ、その他の高速道路、ちょっといくつかありますが、そこも整理して、何とか物流拠点を構えるのにちょっとは良い環境になったのかなというところで、今回、GLPさんのような物流拠点がどんどん増えてきたということは大変嬉しいことですね。

帖佐  なるほど面白い話ですね。我々も一事業者として、そんな大きな構想を考えるまでもなく、どこに事業機会があるかというふうに捉えて日々活動をしています。大阪府に関しては、これまで内陸部に拠点を構えるということはほとんど無理なんじゃないかという点が明らかでしたね。要するに住宅地がかなり整備されて広がっていたり、インフラがなかったりというのも大きいです。そういうことから大きな物流施設は、これまたちょっと後で話に触れますけれども、住宅地に一番来て欲しくない不動産の種類の筆頭ですよね。

だから、物流拠点の立地できる場所となると、湾岸部に限られました。この仕事は2000年のはじめから携わっていますが、最初は、リーマンショックが終わってしばらくの頃は、内陸部に開発案件は1件もできなかった。全て、大阪オリンピックをやろうとしていた舞洲ですとか、あの辺に拠点を構えていたというところがあって、そこに限られました。でも本当は、配送を考えたり人々の利便性を考えたりしたときに、やはりダイレクトに物流施設ができた方がいいに決まっているというなかで、今の橋下さんの話を聞いて、確かにそれが全部できたらもっと良いと思いましたね。それでも少しずつ周辺の道路整備が進む中で、農地が宅地に転用されていって、今回こういう開発ができるようになったのは、少なからずの進歩なのかなというふうに捉えています。

橋下  非常に嬉しいです。別に僕らが方針を立てたから全部それで大阪が変わったというわけではないのですが。やっぱり政治・行政というのは大きな方向性が出れば、役人はみんなそっちの方向に走ってくれますよね。だから、大阪を物流拠点の都市にしようということで大号令をかけたので、おそらく物流拠点が来てくれることにはウエルカム、自然に。今大阪府の職員、特に大阪市の職員もそうなっていると思いますから。ぜひそこは、昔は住宅からは嫌われたかもわからないということを帖佐さんは言われていますけれども、役所がそこは精一杯サポートすると思いますので、物流業界の皆さん、大阪はもう物流拠点ウエルカムというようなところで、いろいろとビジネスを展開していただきたいと思いますね。

司会  実際に帖佐さんは実感されていますか。その辺りは。

帖佐  はい、少しずつ変わってきているなという気がします。昔、物流施設が倉庫と呼ばれたときには、要は物を置くだけのスペースですから、人がほとんどいらないわけですね。そうすると、雇用も生まない。それからそういう倉庫、物流施設もそうですけど、閉ざされている施設ですから、地域にあっても地域の人からは何の関心を持たれない。もしくは嫌悪施設として嫌われてしまう。トラックが出入りするなど、地域には何のメリットもない。立ち入り禁止ですから。だから来てくれるなというふうに言われたのが、いや、雇用はたくさん生みます。工場なんかよりもよほどたくさんの人手を今の物流施設では必要としている。地域にも物を届けるという意味で貢献しているというようなことを少しずつ伝えることで、理解がずいぶん増え、我々に対する理解度が高まり、協力的になってきているなという感じはします。もっともっとその部分のアピールを我々からもして、より協力的にサポートしていただけるようにがんばっていかなければならないなと思います。

Vol.2■サプライチェーンの重要性を認識、に続く。

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