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物流課題は経営アジェンダ
HacobuとSAPでDX時代を切り開く

2021年03月22日/物流最前線

<Hacobuのシステム図>
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<SAPのシステム図>
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物流DXが大きなテーマ

――  物流業界のデジタル化の現状について

佐々木  一口に物流業界と言っても、その定義次第で大きく変わります。物流会社はもちろんのこと、メーカーの物流部門、卸の物流部門、小売りの物流部門等多岐にわたります。SAPさんはおそらく物流会社という狭義の部分だけに焦点を当てているのではなく、ざっくり言えばSCM(サプライチェーンマネージメント)の部分を抱合しているものと思います。SCMの中の実行する部分としてのロジスティクスという位置づけで語ったほうが適切かなと思っています。ここ最近、そこに関わるメーカー、卸、小売りの中期経営計画ではDXという言葉が必ず入ってきています。今回のコロナもそれを後押ししていますね。そこで、どうやって物流領域のDXを物流業界に入れていくのかというのが大きなテーマになっています。これまでやってきたことがないので、物流会社や物流部門の方たちはどうしようかと悩まれている企業が多いと感じています。

宮田  物流の専門家ではないので、私の理解の範囲で申しますと、今までの製造業で例えると、良いモノを作り、そして、それを届けるという行為の中で、製造物の保管・輸送機能といったものが物流と考えられてきました。今、SCMの話がありましたが、どうやって無駄をなくし、速く、コストを抑え、在庫も減らしてという王道のセオリーがあると思いますが、最近では逆張りしている会社も出てきています。一番下流となる消費者に届ける行為が消費者にどれだけ素敵な体験を与えているのか。例えばトラスコ中山さんは、全然真逆で在庫を持ちまくり、受注した瞬間に顧客に届けるということが最優先になっている企業もあります。トラスコに頼めば必ず入手できるという体験を顧客に提供しているわけです。もちろん在庫回転率も考えていません。以前までは在庫は悪という考え方が主流でしたが、時代は大きく変わりつつあります。

佐々木  顧客の体験というのを最優先にしているわけですね。新しい流れです。

宮田  もう一つ思い出しましたが、米国のぺロトンという会社。フィットネス業界のアップルと呼ばれていて、フィットネス業界にトランスフォーメーションを起こすことを目的にニューヨークで創業した会社ですが、フィットネスバイクを製造・販売するだけでなく、様々な領域に仕掛けを作って提供しています。その一つにフィットネスバイクを配送する配送員が全員イケメンなのです。これはコロナ禍もあり、運動不足解消に悩むご婦人層が大きな顧客層ということがあるとのことです。当然、配送だけでなく、フィットネスバイクの仕様や利用の仕方等もレクチャーしているようです。これは物流ではないと切り捨てることは簡単ですが、サプライチェーンにおけるモノづくりとかを利用しての顧客満足の概念が変わり始めたということです。

佐々木  宅配便の登場の時と似ているかもしれませんね。今、宮田さんのお話を聞いていて、気づいたのは、物流部門ではどうしても「物流」という切り口だけで切り取ることが多いように感じます。全体のビジネスとして考えた場合、顧客への価値提供が物流ファンクションの役目なのですが、どうしても物流の部分だけで考えがちになりますね。これはほかのセクションでも同様だと思います。情報システム部門でも同様です。全体の中での顧客価値をどうやって提案していくのかといった視点が狭義の物流業界の人には新鮮ですし、それをこれから柔軟な頭で考えないといけないと思いますね。
実は私は、20年前にERP導入のコンサルティングやっていたことがあって、そのころはサプライチェーンの計画系は入っていましたが、実行系としての物流はスコープとして入っていないプロジェクトがほとんどでした。当時は生産までが重要で運ぶ部分にボトルネックはない、と思われていましたが、現在は、労働力不足になり、実はボトルネックは生産だけではなく、物流にあるのではないか、そうすると、物流のキャパシティまで入れて、需給調整を図っていかなければならないということが今後考えうるのかと。

宮田  そうですね。今、インダストリー4.0(第4次産業革命)という話があります。単体の会社だけでなく、経済全体をもう一度再設計しないといけないと。さらに無駄を減らして、再循環型の経済・社会を作ろうとする考え方です。インダストリー4.0では一般的に工場のオートメーションととらえられがちで、サプライチェーンも1本の線のようなイメージがありますが、そうではなく、ネットワークとネットワークがつながっている中で、ロジスティクスをどう位置付けるかということです。工場もネットワーク化されていますからね。
例えば、A工場で数週間で製造していたものが、B工場で1週間で製造できるならB工場に移管するという、とても反応性の高いサプライチェーンになります。これがインダストリー4.0の大きなコンセプトです。ロジスティクスも当然、その範疇に入ってきます。

佐々木  先ほど顧客価値と物流、という話をしましたが、実はそういう意味で、バリューチェーンの中で、物流だけが取り残されているような感じを受けています。他のバリューチェーンはERPでデータがつながっていますが、物流になった途端、それが断絶しています。例えば工場とかもMES(製造実行システム)でつながっており、物流では倉庫まではWMSでつながっていますが、物流の現場のデータまで入っているかというと入っていません。今後、それらをつなげて、すべての現場までの動きが一つの所にデータとして入って、デジタルツイン(現実世界に実在しているものを、デジタル空間でリアルに表現したもの)をいかにシミュレートして最適化していくのかという世界になると思います。さらに、もう一つは物流DXが叫ばれているのとは裏腹に、いまだに紙ベースの業務がまかり通っていることです。さらに厄介なのは、プログラミング言語のCOBOLがいまだに使われているということで、これは紙よりタチが悪いですね。

宮田  確かにそうですね。変革の時代ですが、足元の課題も残っており、将来と現実、両方に対して両またぎでやらざるを得ませんね。現場では、紙の山なのでしょうが、それでも何とかなっていると言う感じでしょうか。

佐々木  紙の山もいたるところで見ましたが、それ以上に大きな壁となっているのが、レガシーの仕組みなんですね。いろいろなレガシーの仕組みが、その場その場で作られており、しかもCOBOLですからね。もう、COBOLのエンジニアもいなくなり、もうメンテナンスもできなくなります。まさに2025年の壁ですね。思い切った経営判断をしないと、変えられないですね。しかし、今こそその経営判断が迫られている時期だと思います。

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