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物流課題は経営アジェンダ
HacobuとSAPでDX時代を切り開く

2021年03月22日/物流最前線

経営者が物流を本気で考えるとき

――  経営アジェンダにしていくには

佐々木  SAPさんとの協業で我々にとってありがたいのは、一緒に話をしに行くときに、物流課題を経営アジェンダとして考えていただけることがあります。物流だけで解決できない問題をSAPさんと一緒に全体のプロジェクトから説明することで、経営層とも問題意識が共有できるわけです。

宮田  Hacobuさんとの協業で我々もありがたかったことは、以前からSAPを使っている顧客に対して、新しい営業のアプローチを気づかせてくれたことでした。今回、SAPの手直しで伺った時、物流部の人からすると関係ないと思われたようですが、「いや、物流側の情報の源はSAPの中の受注情報からきますので、関係は大有りなんです」と伝えました。するとその会社の物流担当者に「SAPを使っていてよかったね」と言われました。SAPの利用メリットが物流担当者に理解された瞬間でしたね。私たちからすれば経営者に大きなITの話をすることはできても、現場部門の人たちにも利用メリットが分かりやすく伝わるのはこれだなと思いました。

佐々木  メーカーなど荷主サイドでは、SAPを知っている割合は高いのですが、物流事業者からはあまりSAPの話は聞こえてきません。しかし、物流事業者の方にSAPの話をすると「SAPをもっと知らなければならない」といった声が起きます。これは、ロジスティクスの仕組みが荷主側のSAPにつながるのなら、まずは勉強したいということなんですね。一方、荷主側の物流部門の人たちとの話では、物流とは関係ないと思っている割合が高かったですね。

宮田  先ほどの話のように、物流部門の方に理解いただける瞬間が多くなったのも事実です。もう一つは山の大きさが見えてきたということです。物流の仕組みだけ考えていてもだめで、全体のシステムの手入れの話まで含めないといけません。データで紐づいているブラックボックス化しているレガシーシステムもあることから、大変だなぁと認識されることと思います。現在は、魅力と困難さを両方認識されている時期だと思っています。ここで重要なのは行動に移すことで、SAPも含めて、トライアルでMOVO Vistaを入れましたと。それだけではダメで、どうやってその後のIT基盤の再構築につなげていくのかというところまで、IT部門の人を巻き込みながら短期と長期の展望をもってやっていくことが必要です。

佐々木  物流とIT部門がそういった形で相互に影響を与え合い、将来展望に向けた推進力が社内で生まれてくると、経営者としてはとてもうれしいでしょうね。

宮田  経営者はそれを待っていると思いますね。日本の経営者の方とよく話しますが、トップダウンって言うけど、自分だけが言っても、全然動くとは思っていないようです。物流に限らずですが、経営者との説明の場に、担当者を同席させると、その担当者の本音が見えてきます。経営者は担当者がそこで「これこれのシステムを導入してみたい」と言い出すのを待っているようです。

佐々木  社長のマネジメント範囲は広く、とても全ての部門は見ていられません。ですからなおさら、社員からの提案を欲しいし、話して欲しいということですね。それも縦割りではなく、お互いが意見を出し合った結果として有機的に結合したものを出して欲しいと。

宮田  そうなんですよ。特に物流というのは縦割りでかなり作業が分割されています。そこに対してITも絡み、生産も絡み、みんなで有機的なディスカッションをして出てくるものを本当に経営者は求めていると思います。経営者の方がいかにこの問題をとらえるかということが、非常に重要で、ひいては最後の暗黒大陸と呼ばれた物流の領域を変えていく肝になる部分だと思います。

佐々木  経営者の方にも理解して欲しいし、社員もリーダーに提案してもらって背中を押すようなことも必要でしょう。自分の担当業務だけきちっとやっているだけではなく、例えば今これをやらないと会社が崖から落ちてしまう、実行すれば最初に話した素晴らしい顧客体験を与えることができるといった視点で、物流こそ鍵ですと言えば、経営陣のど真ん中に突き刺さります。

宮田 そういえばある新聞社では、政治部、社会部、経済部といったものをなくし、特集企画でプロジェクトを組むというような話も聞いています。縦割りの専門家集団から、もう少し横につながりを持ち、広い視点から価値そのものを考えていかなければならない時代になってきているものと思います。

佐々木  今後、SAPさんとの協業を通じて、まずは実際の事例をしっかり作りあげていくことが大切です。登っている山の頂上の景色はお互い見えているわけですからね。これをやっていく上で、まず現場からやっていくのが一つのアプローチですし、もう一つはいきなり経営アジェンダにしていくのもアリだと思っています。まずは形にするということですね。

宮田  全く同感です。最初の1歩、次の1歩と刻んでいくことが必要です。現在、私どもでも現場の提案がERPで閉じていたり、顧客のやりたいことが閉ざされていたりするような場合でも、ちょっと踏み出して、これは物流の話でもあるということを顧客に理解してもらえるように努力しています。そこから1件でも2件でも顧客の「やりましょう」という意見がでてきて、事例を作っていくという大切さは全く同感ですね。この国で、SAPを提供していく根本であると思っています。単なる老朽化システムの入れ替えではなく、もっと本質的な大切なものをやっていかなければならない。明確にそうした事例を作りに行く、それも早く。でないとみんな疲れますからね。(笑い)

■HacobuとSAPの連携
SAPが有する荷主企業の商流情報と、「モノと車両と場所」にかかわる物流情報が集約されたHacobuのプラットフォームとの連携により、サプライチェーン全体の可視化と物流コストの低減/最適化に貢献する。

<HacobuとSAPの連携イメージ>
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■連携効果
S/4 HANAからの出荷指示をMOVo Vistaに取り込み、貨物情報に紐づける形でMOVO上に配送指示を作成。ユーザーは出荷指示に対して配送案件が作成され、車両が割り当たっているかどうか、MOVO上で確認することができる。また、出荷完了の通知と、対3PL/運送会社からの請求情報をSAPへ渡し、タイムリーな会計処理と物流費の把握につなげる。S/4 HANA とMOVOが保持する情報を掛け合わせると、商品別、納品先(取引先)別の物流費の分析と最適化が可能となる。

■【共催セミナー】HacobuとSAPが考える、日本の物流DXと成功のポイント
開催概要
日程  4月21日(水)14:00-15:30
場所  オンライン
申し込み https://bit.ly/3cKtsp0
プログラム 日本企業のDXをいかに進めるか?
      物流におけるDXとは
      日本の物流におけるVisibility面での課題
      DXを実現するソリューションのご紹介

<左が佐々木社長、右が宮田常務執行役員>
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■プロフィール
佐々木太郎(ささき たろう)
Hacobu代表取締役社長CEO
1977年7月24日生まれ
アクセンチュア、博報堂コンサルティングを経て、米国留学。卒業後、ブーズアンドカンパニーのクリーブランドオフィス・東京オフィスで勤務後、食のキュレーションECなどを創業した後、B to B物流業界の現状を目の当たりにする出来事があり、物流業界の変革を志してHacobuを創業。

宮田伸一(みやた しんいち)
SAPジャパン 常務執行役員クラウド事業統括 福島浜通り復興・再生支援担当
2018年より現職にてクラウド事業を統率、日本における戦略立案と実行を担当。
SAP SuccessFactors、SAP Ariba、SAP Fieldglass、SAP Customer Experience、SAP S/4 HANA Cloud、SAP HANA Enterprise Cloud、SAP Cloud Platform、SAP Analytics
Cloud、Digital Supply Chainの戦略製品事業の拡大と成⻑に責任を持ち、日本市場における製品横断での価値増大に貢献。
SAPに入社前は、べリングポイント(現PwCコンサルティング)で4年間に渡り経営コンサルタントとして勤務。

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