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AIによる物流自動化への挑戦
技術革新の重力の中心に

2022年02月15日/物流最前線

<物流センターピースピッキング動作の様子>
20220214kutaragi3 520x347 - 物流最前線/トップインタビュー アセントロボティクス 久夛良木 健CEO

<果物のピッキングシステム動作の様子>
20220214kutaragi4 520x347 - 物流最前線/トップインタビュー アセントロボティクス 久夛良木 健CEO

<久夛良木健CEO>
20220214kutaragi5 520x347 - 物流最前線/トップインタビュー アセントロボティクス 久夛良木 健CEO

センサー群が物流を変える

――  アマゾンも完全自動化を目指していたのでしょうね。

久夛良木  当然そうだと思います。以前、アマゾンはピッキングチャレンジというコンペティションをホスティングしていました。間仕切りのある収納棚に40~50アイテムの商品が収まり、それをいかに正確かつ高速にピッキングできるかを競うものでした。条件はそれなりに厳しくて、箱の中のアイテムの半分はあらかじめ開示されますが、残り半分はその場で初めて知るというタスクです。アイテム群を識別するのはカメラシステムですが、1台あたり数百ドル以内のものという指定で、これで入手可能なのはWebカメラ程度の性能ですよね。その時点では6~7割程度の成功率にしか達しなかったということで、ロボットによるピッキングの自動化は当面はあきらめたと聞いています。

――  ビジョンカメラによる画像認識がまだ低かったということですね。

久夛良木  当時はカメラの性能自体が大幅に不足していて、AIによる推論だけでは人間のように初見の多種多様なアイテム群に対して上手に対応出来ませんでした。開発が加速している自動運転車には、既に数多くのセンサー群が搭載されるようになっていますよね。一方で21世紀に入って既に20年以上経っている現在でも、これらのロボット群には人間の目に匹敵するか、それを超えるようなセンシング技術が未だ備わっていない状況です。肝心の眼が組み込まれていないわけです。

――  最先端の技術を物流現場にも応用しようということですね。

久夛良木  すでに海外ではそのような取組が始まっています。例えば中国のEMSや物流領域では、既存のAGVやGTPに加えて、ロボットによる全自動化に総力を挙げています。またドイツが提唱したインダストリー4.0で、サプライチェーン全体を合理化するためのネットワーク化と、 end-to-endのオートメーション化を真剣に模索しています。もしかしたら、今後欧州からも新しいムーブメントが動き始めるかもしれません。世界規模でEC需要が急拡大しているだけに、物流現場の逼迫は世界共通の社会課題になりつつあります。とても危機感を覚えましたね。

――  優秀なセンサー群があるわけですから、それを利用しない手はないと。

久夛良木  2D/3Dロボットビジョンカメラ自体は既に世界各社から市場に投入されていますが、性能的にはまだまだ改善の余地があります。先端デバイス群、デジタル処理技術、情報処理技術、AIなど、複数の先端技術を融合させるシステム設計力が求められます。それほど遠くない将来に、人間並みかそれを超えるロボットやモビリティシステム群が、登場し始めるのではないでしょうか。高度なセンサー群が、物流や生活を支える時代の到来です。

――  しかし最高の技術を盛り込むと、とんでもない価格になるのでは。

久夛良木  まずは産業にすることから始めます。例えばビッグサイエンス用途なら、多少高くても売れるでしょうが、産業にするなら、世界中の数多くの場所で利用されることが必須です。プレイステーションも発売当時は価格が高いと言われましたが、大量生産効果でどんどん価格を下げていき、巨大なエンタテインメント産業の一角を支えるまでに成長しました。物流の自動化においても、スケールメリットが得られる仕組みに挑戦していくつもりです。研究開発の領域でも、オープンコラボレーションを視野に、世界のベストプラクティスを貪欲に取り入れていく予定です。

――  コラボレーションと同様、このところスタートアップ企業でも様々な企業との提携が伝えられていますが。

久夛良木  どこかの特定の企業と組むという発想は、日本の企業では多いですね。技術補完的なものから、あそことあそこが組んだから、自分たちも別の座組でといった発想ですね。このようなハードコラボレーションは、特定の領域では短期的に功を奏するかもしれませんが、グローバルネットワーク時代でのスケーリング、という点では必ずしもうまく働くとは限りません。

――  かつて、日本はロボット大国と呼ばれていました。

久夛良木  20世紀型の大量生産時代に向けたロボットでは、日本は世界を大きくリードしてきましたが、今や欧州や中国の企業群にも市場シェアを奪われつつあります。今や日本が電子立国、自動車立国として急成長した時代から、インダストリー4.0に代表されるようなネットワーク化、SCMによる自動化、AI化の流れにおいては、必ずしも競争力を保てていないのではという印象を受けます。

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