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物流最前線/パスコ 島村秀樹社長 対談 ナビタイムジャパン 大西啓介社長

2018年11月26日/物流最前線

シナジー効果を発揮して、さらに高いレベルの製品を生み出す

―― この提携が物流業界に貢献できることは。

大西 ナビゲーションの立場から申しますと、人手不足解消に役立つものと思います。ドライバーは入社するとベテランドライバーのトラックに同乗して道等を覚えることから始めますが、パスコさんと連携したナビでは自分の乗るトラックの車種と型式を登録しておけば、通れる道をナビゲーションしてくれます。車高や車幅により、通れる道や交差点が限られてきますが、それをきちんと計算して旋回できるかどうかまで旋回アルゴリズムにより内輪差、外輪差まで計算して導き出し、通れるルートを案内してくれます。このナビの指示通り行けば、初心者でも安心・安全に走行することができます。トラックドライバーは貴重な人材ですのでトラックカーナビを提供することで、効率化を図ることができ、ひいてはドライバー不足、人手不足に貢献できるものと思います。実は、この内容が評価されグッド・デザイン賞にも選定されています。物流業界の抱えていた課題の一つに多少なりとも貢献できるものと思っています。

島村 配車管理システムを提供する立場から言えば、複数の荷物、車両、配送先などの条件から算出した最適な配車計画により、作業時間や配車管理の時間等の効率化を図れれば、物流への貢献ができると考えています。今まで、配車計画を作成する方は、配車担当者とよばれる人達です。配車計画は、豊富な経験と多くの知識が必要な業務です。また、ドライバーからの信頼が厚い担当者が多いのも特徴です。そういう方々に、システムを提案しても「そんなものは、使えないよ」と言われて、現場での抵抗が大きいのが一般的です。そのためにも、ベテラン配車担当者のノウハウをシステムに組み込み、とにかく実際に使用してもらい、効果を確かめてもらえるように努力しています。

大西 効果を示すことは重要ですね。ナビとの連携では、例えば到着地の予想時刻を示すことが効率化につながります。スマホ端末のGPSとカーナビアプリから取得される利用者のプローブ情報、そして警察のVICS情報などを組み合わせて、当社独自技術による経路探索を行えば、到着地の予想時刻を非常に正確に予測することができ、30分以内のルートであれば±5分以内で予測できます。しかし、物流拠点に1時間も早く着き、ペナルティを課せられているトラックドライバーもいらっしゃると聞きます。ナビ通りに配送すると、指定時間内に到着できますから、配車計画の中で、到着時刻を正確に把握することで、これまで5件しか対応できなかった配送も7~8件と増え、作業効率化に役立つと思います。

島村 そのとおりですね。ナビゲーションの実績結果をフィードバックできるシステムを両社で作っていきたいですね。到着する時間だけでなく、例えばスクールゾーンなど周囲の安全に配慮する場所は時間帯を考慮することや、荷物の積み下ろしは何時から何時までと決まっていることなどを条件に、正確な到着時間が予測できれば、作業効率に大きく寄与できると思います。実際の現場から情報をフィードバックすることで、さらに高いレベルのサービスを生み出していくことが可能ですね。

<ナビタイムジャパンのトラックカーナビ>
20181126pasconavi7 500x281 - 物流最前線/パスコ 島村秀樹社長 対談 ナビタイムジャパン 大西啓介社長

人手不足解消は自動化も必要だが、物流業界はハイテクの魅力ある職場に

―― 物流を取り巻く環境について

大西 人手不足はどの業界でも深刻ですが、物流業界も同様ですね。やはり楽しいという感覚がないと魅力ある職場にならないと思います。トラックドライバーは大変な仕事で、ある意味命をかけている職場です。ドライバーの安全を確保してあげることは最優先で、その意味ではITやIoT化、ロボット化でドライバーの負担を軽減していくことも大切でしょう。それとともに、先ほど紹介した仲間のトラックがどこを走っているのかを表示してあげるようなちょっとした遊び心を取り入れるのも、一人じゃないといった仲間意識を生み、楽しい職場づくりになると思います。今後の採用活動においても繋がっていくものだと思います。

島村 確かに人手不足は深刻で、特に3Kと呼ばれる職場では、今後益々人手不足に陥る可能性があります。実は、私どもの測量も3Kの職場と呼ばれている業界です。よく道路の脇で測量機材を設置して、計測している人を見かけると思いますが、どんなに暑くても寒くても作業をしています。私どもは、そのイメージを払拭するために、モービルマッピングシステムという計測専用車両を導入しました。車を運転しながら、車両に搭載したカメラやレーザ装置で、道路や周辺の地物を計測するシステムです。これを新入社員に見せると「ちょっとかっこいいな」といった反応が返ってきました。3Kから脱却するには、測量分野にAI、IoT、ロボット技術などの最先端技術への取り組みが大切であると痛感しました。ナビタイムさんのように、スマホによるスマートで効率的なナビができるといったことを物流業務の中で見てもらうことが大切ですね。

大西 ラストワンマイルの問題でも、スマホを使って到着時刻を知らせる仕組みがありますが、受け取る人の不在もなくなり、ドライバーのストレスも、相当緩和できるものと思います。AI、IoT、ロボット化は積極的に進めた方が良いと思います。少子高齢化で確実に労働人口は減るわけですからね。パスコさんは自動走行についても開発をされていますね。

島村 私どもは、自動走行のために、先ほど話したモービルマッピングシステムを用いて、全国の高速自専道の計測を行い、道路地図データを作成しています。いくら自動走行が進んでも、物流のラストワンマイルは、家の玄関まで運ぶという作業は、人間の仕事として残ると思います。輸送量を多くするためにトラックの隊列走行などが研究されています。燃費の節約という点で進むでしょうが、ラストワンマイルをいかに効率よく楽に運べるかといった部分が最後に求められると思います。その点では、今後はスマホの役割が重要になると思います。

大西 スマホをみんなが持っていることが大きな要素ですね。さらに、スマホのアプリによってドライバーと直接つながり、サービスを発展させられるわけですから。大きな可能性を秘めています。

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