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物流最前線 鴻池運輸の物流戦略

2019年08月20日/物流最前線

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「期待を超えなければ、仕事ではない」。一瞬ドキッとするインパクトの強いブランドプロミスを掲げる鴻池運輸。これは鴻池運輸の140年近い歴史のなかで脈々と引き継がれてきた「人」と「絆」を大切にする想いから導き出されたものだ。鴻池忠彦社長は「この言葉は鴻池運輸がこれまで実行してきたことを表したに過ぎない」と話す。

請負事業と物流事業の2本柱で成長を続けてきた鴻池運輸。特にこの10年は、サービス業の請負であるメディカル関連と空港関連事業の成長はめざましく、収益的にも大きく貢献しているという。人手不足、自動化、AI化、IoT化の波が押し寄せてくる物流業界の中での今後の取り組みと戦略を鴻池社長に聞いた。

<技能実習生の勤務風景>

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企業単独型でフィリピンから技能実習生

―― 現在の物流環境について。

鴻池 歴史は遡りますが、平成時代に入って規制緩和が行われ、物流分野での競争が非常に激しくなりました。その結果、トラックドライバーに対して、長時間労働と低賃金というしわ寄せが来たものと思います。その後、トラックドライバーの不足と高齢化が深刻になったことで、ようやく社会的にもこのままでは物流が成り立たないと認識され始め、適正な運賃改正が進み、働き方改革による長時間労働の是正も行われつつあります。

―― 鴻池運輸でも、人手不足問題は深刻ですか。

鴻池 そうですね。少子高齢化による労働人口の減少もあり、弊社でもトラックドライバーに限らず、倉庫の要員、フォークリフトオペレーター等物流分野全般のみならず、生産工程の請負事業などでも深刻な人手不足となっています。

―― ドライバー以外の業務での技能実習生の活用は。

鴻池 現在海外から年間およそ300人程度の技能実習生を受け入れています。企業単独型の技能実習生制度です。この制度は10年以上前から続けており、人数も拡大してきました。最初は若干心配していましたが、実際に働いてもらうととても優秀かつ真面目で、日本人スタッフ以上に勤勉な方が多いです。

―― 企業単独型で外国人を技能実習生として受け入れているところは物流業界では少ないのでは。

鴻池 確かに企業単独型で採用しているところは物流業界ではあまり聞きませんね。全業種でも1割程度かと思います。弊社では、主にフィリピンのグループが現地で採用している人材から、優秀な方々に日本での技能実習に来てもらっています。各地の物流センターや営業所等の職場で受け入れていますが、実習内容は物流であり、在留期間はわずか1年の業務が大半なので、随時300人程度の入れ替えが発生することになります。

―― 毎年300人というと大変ですね。

鴻池 企業単独型であり、当社グループのフィリピン現地法人が人材を送り出し、日本で当社グループが受け入れ、安心して実習に取り組んでいただくために、専門の部署も設置し、業務や生活面でのサポートも行っています。

―― 技能実習生というと、これまであまり好ましくないニュースもありましたが。

鴻池 企業単独型と異なり、団体監理型の受け入れの場合、現地の送り出し団体や日本の受け入れ団体が実習生から搾取したりケアが不十分だったりすることで、実習生の脱走や行方不明になるといった残念な事件が一部で報道され、よくないイメージもあります。現状、当社の場合は企業単独型であり、グループの現地法人の従業員から希望者を募り、選定された人材が来日し、受入れ企業として責任をもって実習を行い、技能を習得していただき、帰国してしっかり働いてもらうことが求められます。おかげさまで毎年倍以上の応募があります。

―― 国の特定技能の14業種にはまだ物流関係は含まれていませんね。

鴻池 この4月1日から、入管法が改正され、外国人が日本で最長5年間在留できる資格である「特定技能1号」として14業種が指定され、その中に「航空業」が加わりました。具体的には航空機地上走行支援業務、手荷物・貨物の取扱業務および搭降載業務、航空機内外の清掃業務といった、当社の成長事業の一つでもある空港におけるグランドハンドリング業務です。

これまでグループで受け入れてきた技能実習生は在留期間が1年間の「技能実習1号」であり、1年間で習得できる技能には制約がありましたが、2号を修了すれば「特定技能1号」の資格を得るための技能試験・日本語能力試験が免除されます。しかも今回、当社は企業単独型技能実習における空港グランドハンドリング技能実習評価試験(社内検定)を実施する機関として認定いただけましたので、当社の空港事業の技能実習生が2号を修了(検定にも合格)すれば、特定技能1号の在留資格に変更できる資格を得ることができるようになります。変更を入管に申請して認定されれば、技能実習1号・2号の3年間に加え、特定技能1号として5年間、通算最長8年間もの間、スキルを身に着けていただくことが可能になります。これは当社で受け入れている実習生の皆さんにとっても、当社にとっても大変大きな価値があると思います。

まもなく国交省からそのガイドラインが示されると思いますので、それに則って進めていきたいと思っています。物流分野も早期に特定技能に指定してほしいですね。

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