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RaaSのプラスオートメーション
次代のロジスティクス構築へのチャレンジ

2020年12月24日/物流最前線

<cubeが入居する物流倉庫>
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<cubeの内観>
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R&D施設「cube」開設でサポート機能を強化

―― ロボットの運用や保守のサポートなど、サービス面の拡充は進んでいるのでしょうか。

山田 立ち上げ当初は限られた人数で限界がありましたが、この年末で30人程度まで人数が増員されますのでサービス、メンテナンス体制を強化している最中です。最初にサービスを導入した企業は1年が経過しているので、その中で出てきた追加の改善事項をしっかりとフォローしていく体制を拡充している段階です。

飯間 サービス、メンテナンスの体制はソフトウエア関連だけでなくハードウエア関連もあるので、現地パートナー企業を含めて体制を構築しています。顧客への提案も、ロボットを使っていただくうちに当社側でより良い使い方についての洞察が深まりますので、今後はより定型化された形で改善につながるような提案を頻度良く出せるようにしていきたいですね。

―― 豊田自動織機との提携も、サービス強化の一環でしょうか。

飯間 はい、まずはエンジニアリング機能の強化ですね。それと、顧客のなかには、大型のコンベヤや自動倉庫などが必要な場合もあると思います。そこは+Aでは対応しきれないので、豊田自動織機にお願いするべきだと思っています。逆に、豊田自動織機の顧客で短納期で自動化システムを組みたいといった場合は、+Aに仕事が舞い込む場合もあると思います。お互いに適した領域で顧客の課題解決に取り組んでいくということですね。また、豊田自動織機が全国に持つ販売店網でも当社のRaaSを提案いただくことも検討中です。

<導入現場を再現した環境で行われるロボットの稼働試験>

―― 今回お邪魔している「cube」の開設も、サービス強化につながると聞いています。

山田 はい、ここでは+AのR&D施設としてロボットを活用したソリューションの開発等を行っていますが、同時にエンジニアなど社内人材の育成の場としても活用しています。また、顧客となる物流事業者さんや荷主さんにロボットのデモンストレーションを体験していただいたり、現場に近い環境を整えて実用性を検証し、本導入までのリードタイムを短縮するといった取り組みも行っています。

飯間 cubeには顧客の課題が当社と顧客の議論を通じて蓄積されてくるので、ロボットメーカーさんもcubeで議論することによって色々な気づきがあるようです。より良い製品開発や売り方に繋げていって欲しいと期待しています。

山田 顧客、メーカー、+Aのいずれかのみが良くてもダメ、物流業界全体を含め三方良しで皆にメリットがあるセンターとして運営していきたいと考えています。そのようなコンセプトに共感頂ける関係者の方であればいつでも協業は検討させて頂きたいと思っています。

RaaSで「次代のロジスティクス」を創る

―― 10月時点で12社・700台が採用していたRaaSですが、その後の採用状況はいかがですか。

山田 あれからまた増えましたね。顧客が2~3社増えて、100台くらい成約数が増えました。採用されたロボットはt-SortとAMRですね。ECの市場の拡大基調がコロナ禍で加速し、以前に増して自動化の需要が高まっています。物量が捌ききれない状況下で、早期に出荷能力を上げるための手段として採用されています。

―― RaaSの顧客に多いのは、やはりEC事業者でしょうか。

山田 ECもそうですが、さまざまな業態の事業者から利用いただいている状況です。現在提供している主力ロボットは仕分け工程ですが、仕分けでも商品単位の細かい仕分けから、ケース単位の仕分け、方面別や店舗別といったように色々な形があるので、これらの現場でバランスよく使っていただいています。
また、EC事業者ではなくてもECの影響は甚大です。アパレル店舗がEC需要に応えるために一時的に返品が発生したり、ECの出荷荷物を方面別に仕分けたり、といった需要も多くなっています。

<大手宅配事業者のRaaS導入現場>
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―― 顧客のなかでも、特にRaaSの特徴が生きた案件は。

山田 大手宅配業者の現場に採用された案件でしょう。緊急事態宣言が4月に発令され、巣ごもり消費が急増し、これ以上貨物が捌ききれないといった状況で相談を受けました。ここにベルトコンベヤなど従来型の固定設備を入れるとなると稼働までに半年~1年はかかるところですが、この現場ではt-Sortを使ったソリューションによって、初期相談からわずか2~3か月の間で稼働させることができました。

―― 今後は顧客を増やしてRaaSのプラットフォーム形成を目指すわけですが、どの辺りが損益分岐点となるのでしょうか。

山田 現状では固定費が重いため営業赤字ですが、これは当初から織り込み済みのことで株主も承知しています。現在の導入ペースを考えると、黒字化のタイミングは2022年度中を見ています。

―― 今後のRaaS事業の目標は。

山田 数字も追っていきますが、今後はRaaSで広がる顧客企業同士のアライアンスを繋いでいくことにも注力していきます。具体的には、同じロボットを導入している現場同士を繋ぎ合わせて、作業量が逼迫している現場の貨物を他の現場でカバーし合うといったイメージです。食品やアパレル、宅配など、業態が異なる現場でも、同じロボットを使っていればお互いの領域をカバーし合えるのではないかと考えています。2021年度に構想をまとめて、2022年度中のスタートを目指していきたいです。

飯間 新たな協業領域をRaaSの中で作っていければ面白いですよね。協業領域が広がり、一方で各社が先鋭的な競争領域に注力できれば、業界全体の効率化・高度化につながるというわけです。

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―― +AがRaaSを通じて実現したいロジスティクスの未来像とは。

飯間 私は過去にIT領域に従事していたのですが、ITではデータセンターがクラウド化、パブリッククラウド化したり、ISDNがADSLや光通信、無線になったりといった変化が起こり、これによって随分と社会も変化しました。製造業でも各事業体で閉じていたファクトリーオートメーションがスマートファクトリー、インダストリー4.0の概念へと広がり、モノ作りが変化しています。同様のことが物流にも起きれば、社会に対してプラスに作用するのではないかと考えています。ロジスティクスの柔軟性や拡張性、安定性が今よりも一段階上がれば、より社会に対して意義のあるものになるのではないかと。他業界で起こってきた変化が、ロジスティクスの世界でも起こせるし、起こしていきたいと強く思っています。

山田 物流業界でずっとやってきた人間からすると悔しいことですが、日本では残念ながらいまだに物流の社会的地位が低いですよね。海外では、例えば物流エンジニアという専門職が引く手あまたであったりと物流業界は比較的高い地位にあります。日本の物流もそうなっていくべきです。しっかりとした価値を提供しているのだから、相応に評価されるべきだと思います。RaaSによって業界イメージを刷新し、物流業界全体の地位を向上させたいと願っています。

飯間 ロジスティクスは、製造から商品まで価値の連鎖(バリューチェーン)を繋ぐ基盤ですので、物流を強化することがチェーン全体の最適化にもなります。ですので、ロジスティクスを強化するべきですし、ロジスティクスの価値をもっと社会に認めて欲しいと思っています。

■プロフィール
飯間 卓 代表取締役社長
三井物産でエレクトロニクス事業、ベンチャー投資、米国ICT新規事業、ICTコンサルティング、IoT関係事業会社出向、ICT・物流・金融事業西日本統括等を経て、2019年よりプラスオートメーションの創業メンバー。

山田 章吾 COO
三井物産で物流、金融、不動産、電力プラント、農業事業等多分野に関与。2018年から日本GLPとのRaaS共同事業検証を推進、プラスオートメーションの創業メンバー。

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