Hacobuは5月16日、国土交通省・秋田県トラック協会のコンサルティングパートナーとして2021年から参画している「首都圏向け青果物の物流効率化 実証実験」の成果を公開した。
実証実験では、ドライバーの負担を軽減し、秋田から首都圏向け青果物輸送を持続可能な状態にすることを目的に、生産地である秋田県での集荷輸送と幹線輸送を分離し、効率的な集荷ルートの見直しやハブ拠点(中継点)の設置、トラック予約受付サービスの活用等を実施し、トラックドライバーの長時間労働改善と青果物輸送全体の効率化を検証した。
また、荷物が到着する首都圏の市場での荷待ち・荷降しによる停留時間の実態を明らかにするため、横浜市中央卸売市場で実態調査を実施した。
生産地側(秋田県)で2023年11月に行った実験結果では、2022年度の実績値(最大15時間超)と比較して、ドライバーの拘束時間が20%短縮され、厚生労働省の改善基準告示で定められる拘束時間の上限である13時間を下回る12時間25分となった。
一方、同施策を通年で実施した場合の物流関連コストは、休閑期(12月~6月)の出荷量が減少することから集荷便の導入やパレタイズ作業の適正化等の固定費が要因となり、現行費用に比べて大幅に増加する見通しであることが分かった。
<現行のパレタイズ・検品方法(上2段)と総数検品を取り入れた方法(下段)の比較>
消費地側(横浜市場)で2024年2月に実施した実証実験では、トラック予約受付サービスを活用することで、入荷車両が集中する時間帯(19時~22時)に発生していた荷待ちが解消され、大幅な改善効果が見込めることがわかった。
また、産地で等階級ごと、または仲卸伝票(送り状)単位でパレタイズされて輸送されている現行の方法には、等階級パレタイズは産地での確認作業に時間がかかり、仲卸伝票(送り状)単位のパレタイズでは積載率が低下するといった課題があったが、これらの問題に対して「総数検品」を採用することで、荷受けと仕分けの作業を分離し、市場での検品作業時間を大幅に削減することが可能になることがわかった。
今回の実証実験の成果について、Hacobuで物流DXコンサルティングを手がけるHacobu Strategyは、「生産地側の集荷業務や空パレット回収業務などの一部業務費用が、物流事業者から荷主企業への請求が行われていない現状に鑑みると、このままでは新たに産地コストが発生し、物が運べなくなる以前に、農産物を作れなくなる(運ぶ物がなくなる)」と現状への懸念を示した。
そのうえで、こうした事態を防ぐためには、「物流関連の費用をサプライチェーン全体で負担する必要があり、物流コストが上昇すれば最終消費者への価格転嫁は避けられない」と、見解を述べた。