環境DNAを利用した生物多様性観測ネットワーク「ANEMONE(アネモネ)」を主催する、東北大学大学院生命科学研究科と観測活動に参画してきた日本郵船と同社グループ会社の近海郵船、南三陸町、アースウォッチ・ジャパンの4者は6月2日、環境DNAを用いた魚類調査によるビッグデータ「ANEMONE DB(アネモネ)」をオープンデータとして運用開始することを発表した。
<「ANEMONE DB」参照サイト・トップ画面>
「ANEMONE (アネモネ)」は、2017年から研究者と市民ボランティアが全国で環境DNAを用いた魚類調査を実施し、ビッグデータとして構築してきた。このほど充分なデータが蓄積されたことから一般公開する。
環境DNA調査に関するビッグデータの構築、およびオープンデータとしての一般公開は世界初。今後、継続的な調査体制を確立し、生物多様性回復や漁業等産業に貢献する。
<海水サンプリングを行う近海郵船の運航船「ましう」>
日本郵船は、2021年に東北大学、北海道大学とともに、外洋での環境DNA観測を試験的に実施し、158魚種のDNAを検出することに成功。同社のグループ会社である近海郵船の営業航路を活用し、常陸那珂港〜苫小牧港間を航行する定期船「ましう」で海水サンプリングを実施し、分析結果は「ANEMONE DB」で公開されている。
日本郵船グループは、今後も「ANEMONE DB」のデータ拡充と調査範囲の拡大に貢献していく方針で、今夏から海水サンプリングを月1回の頻度で実施する予定。
環境DNAとは、水中や土壌中など環境中に存在する生物由来のDNA(デオキシリボ核酸)。捕獲や直接観察に頼る従来の生物調査法に比べ調査現場での作業が圧倒的に少ないことから、多地点、高頻度での生物調査を実現する画期的な方法として注目されている。
なお、「ANEMONE DB」は、運営体制の強化やネイチャーポジティブな考え方の社会啓発に向けて「ANEMONEコンソーシアム」を年6月1日に設立。今後、同コンソーシアムが主体となり、ANEMONE DBの利活用を推進し、専門的な知見の共有も展開していく。