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「歩かない物流センター」実現
エレコムの物流センター戦略

2022年07月12日/物流最前線

<シャトル式立体自動倉庫システム(SAS-R システマストリーマー)>

<小口配送の仕様に特化した製函機>

人手不足により物流は危機に直面

――  さて、今回、新しい物流拠点を作られたわけですが、現在の日本の物流環境をどのようにみられていますか。

  物流業界の現在に対しては非常に危機感を持っています。今、物流業界は、物流ができなくなる状況に近づいていると思っています。相模原のセンターで隣接する荷主大手が「従業員が集まらず、運営ができなくなりつつある」という言葉で初めて気づきましたが、その一番の要因が労働力不足ですね。将来的に労働力が増えることはなく、確実に減るという試算がでていますし、現状でもなかなか人が集まらない状況です。今後、改善の見込みはないと思います。また、このところ多発している自然災害ですね。関西地域には南海トラフの被害の甚大さの予測もでていますし、台風等による水害等も頻繁に起こっています。それに、新型コロナ禍のような、パンデミックが発生することも考えられます。会社としては、真剣にサステナビリティの観点から備えていく必要があります。

――  労働力不足、自然災害の二つは備えることはできても、なんともしがたい問題ですね。

  そして、3つめが市場環境の変化です。EC需要の伸びは急激で、コロナ禍の中で、一段と顕著になりました。消費者が便利になってきたことは確かですが、物流業界には相当な負荷がかかっています。作業現場を見ていただければわかりますが、荷物の小口化が一層進み、作業がどんどん煩雑になってきています。それと、最も大きな課題が、ドライバーさんの絶対数です。2024年問題もあり、物流をやるにあたっては、どんどん外部環境が逆風となっているようです。「本当に物流ができなくなる」。これは、いろいろな物流現場の方と話している中でよく聞く話ですね。物流の危機が目の前にある状況だと思っています。

――  消費者や国民の便利さを追求した結果が今日のスタイルですね。

  世の中が便利になったことは良いことだと思います。しかし、一部のサービスの適正化については、今後真剣に議論する必要があると思います。物流の力がそこまで追いついてないわけですから、物流事業者の負荷が増すのは当然です。要はそのバランスだと思います。今、宅配ボックスが増えていますが、これにより再配達がなくなることで、どれだけ多くの負荷がドライバーから軽減されたことでしょう。置き配も同様の効果を生んでいますね。

――  今後の物流を考えていくうえで大切なこととは。

  このままでは「物流ができなくなってしまう」と考えている方は多いと思います。そのために、ノウハウの部分を含めてそもそも省人化や自動化はどうすれば実現するのか、わからないで悩んでいる企業や担当者は多いと思います。私もそうでした。例えば、知識やノウハウをシェアリングして情報共有を図る体制を業界なりで取り組めれば良いと思いますね。そうすることで、サプライチェーン寸断の時でも容易に代替の手段を構築できるものと思います。

――  今後の御社の展開ですが、当面は東西2拠点体制で行くと。

  そうですね。EC需要増に合わせ、顧客に直送する割合も増えており、サテライト機能を持った地域デポを作るといった案もありますが、現実的に当社が作ってもあまり意味はないと考えています。エレコムだけで作るのはもったいないですからね。それは通販企業と協業という形でできると良いと思っています。

――  パンデミックや物流危機の中での物流センター運営になりますから、今は大変な時期ですね。

  まさに物流危機を乗り越えていかなければならない時期ですので大変ですが、物流の産業革命が起こっている最中ですので、逆に楽しいと感じています。このセンターは2月に稼働を開始しましたが、数年後には市場環境も変化し、製品形態も変わっているかもしれません。それに合わせて物流機能も対応できるように変化させていくつもりです。おそらく、来年にはまた新しいシステムや機器類で新たな物流形態が誕生しているものと思います。

<町 一浩取締役物流部部長>
20220711elecom10 - 物流最前線/エレコムの物流センター戦略

■プロフィール
町 一浩(まち かずひろ)
エレコム 取締役 物流部長
1995年 エレコム入社
営業部を経て2000年より物流部に従事。
物流技術管理士。
数々の物流センター構築・立上げを実施。
現在は省人化・機械化物流センター構築を推進中。

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