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標準化で「全体最適」目指す
スマート物流でつながる未来

2023年04月14日/物流最前線

標準化のメリット、導入への道筋

202304sip06 - 物流最前線/SIPスマート物流・田中従雅PDインタビュー

――  各企業にとって標準化するメリットは。

田中  現在は、個社が持つ機能を繋ぎ合わせて新しい価値を創造する時代です。システム的には、ヤマト運輸もそうですが多くの企業がAPI接続を進めています。APIが標準化に準拠していると、N対N(多数対多数)の関係を創れる、提供側も利用側も多くのメリットを得ることができます。企業が持つシステムを今から標準化にすることは難しくても、これから進む企業間の繋ぎには標準化は価値あることと理解していただけると思います。

――  どう導入していけばいいのでしょうか。

田中  導入方法として1つは、先行して取り組むセイノー情報サービスや流通経済研究所のように、「サービスプロバイダー」として、自ら物流・商流データ基盤を活用したサービスを立ち上げる。2つ目は、それらのサービスのユーザーとして、物流・商流データ基盤を利用する方法があります。

――  セイノーさんは、「スマート物流サービス」で地域物流に取り組み、社会実装されていますね。

田中  物流の効率化の一つの解決策は共同配送となります。問題は、その共同配送をいつから始めるのか。そこに着眼したのが、このモデルです。物があって「さぁこれ運びましょう」というのは、現在でも求荷求車マッチングが存在します。このモデルでは、物が必要とされる段階、つまり製造を依頼した段階から物流までを一つのプロセスとして、物流まで含めた計画を立てます。共同配送のマッチング率が高まるというモデルです。SIPスマート物流サービスが目指す、理想形の一つだと思います。

――  製造段階から計画的に物流をまわす、ということですね。

田中  そうですね。それを1社でやらないで複数社でやることにこれから向かうべきであって、そのためには情報を一つのところに集めないとできない。集めようとすると、集める場所やデータの安全性の担保みたいなことを、とにかくクリアしないと、なかなか情報が集まらないということがあったので、基盤の機能とそこに必要なプロダクトを作ったというのが、今回の一つの形だと思っています。

――  サプライチェーン全体となると荷主側の協力も必要なのでは。

田中  このプロジェクトの一番の大きな特徴は、サプライチェーン全体での取り組みであることです。物流課題を物流事業者だけで解決するには限界があります。上流の荷主から解決していかなければサスティナブルな物流にならない。最近、経済産業省からそのようなメッセージが多く出されていますが、初期の段階から経済産業省にプロジェクトに入っていただいており、荷主も含めてサプライチェーン全体で解決しようという方向性は、今後も続けるべきだと考えています。

――  標準化というのは、荷主も物流事業者も含めた一つの言語体系というか、みんなで使ってもらわないと意味がない。

田中  もちろんそうです。標準化できていれば、今繋がっていない相手に繋げるときにも簡単に繋げられることになり、N対N(多数対多数)の関係を構築するためには必須のことです。

――  2つ目の導入方法とは?

田中  このプロジェクトの中ですでに参画していただいているテックベンチャーさんとかテックカンパニーさんは、この標準化を取り入れてくれているので、中小企業はそういう会社のサービスを使っていくことも必然的になっていくと思います。

――  そういうものを使えば、加速度的に標準化がすすむ。

田中  加速することになります。システムを作るときに何を悩むかというと、標準化の対象である物流業務プロセス、物流メッセージ、物流マスタを決めることです。初期段階では個社内で閉じていたので大きな問題とはなりませんが、企業間を繋げることを目的とすると、2社、3社と繋ぎ先が増える度に、物流業務プロセス、物流メッセージ、物流マスタを確認し変換する必要があります。この例は利用側の話ですが、提供側が合わすケースもあります。標準化は、提供側も利用側も多くのメリットを得ることができます。企業間の繋ぎには標準化は価値あることと理解していただけると思います。

――  標準化しないと、どんなデメリットがあるのですか。

田中  メルカリ便ってありますよね。メルカリさんとヤマト運輸がシステムをリアルで連携して実現しています。そこで創られた繋げる仕組みは、メルカリさんはJPさんへ、ヤマト運輸は他社さんにも提供しています。ここは話しづらいことですが標準化に必要性を説く意味でお話しすると、JPさんと他社さんの繋ぎも簡単だと思います。

――  そうすると、だんだん標準化されてくる?

田中  最終的に全てが標準化されるには時間がかかります。この時間の経過の中で目標を失わないことが大切です。このプログラムで、物流標準ガイドラインを示せたことは大きな成果だと思っています。

セイノー情報サービスが地域物流で実装
<セイノー情報サービスのビジネスモデル>
202304sip07 - 物流最前線/SIPスマート物流・田中従雅PDインタビュー
セイノー情報サービスは、地域の荷主、物流事業者間で共有する物流・商流データ基盤を開発して物流需給を見える化し、フォーキャスト(早期運送依頼)とネゴシエーション(日付猶予期間)による効率的な地域計画物流モデルを構築。集配および幹線の積載率向上、ドライバーの拘束時間短縮などの有効性を検証した。2021年11月にSIP地域物流ネットワーク化推進協議会を設立。2023年2月時点で123会員参加のもと中ロット貨物パレット共同輸配送の構築、普及および啓発を目指している。

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