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魅力ある物流現場実現のため
現場第一のワクワクする会社に

2023年04月21日/物流最前線

20230421 kirin6 - 物流最前線/KGL安藤 弘之社長インタビュー

2024年問題へ最終準備の年

――  2023年は御社にとってどのような年になりそうですか。

安藤  各社さん立場は同じだと思いますが、いわゆる物流の2024年問題に向けた最終準備の年だと認識しています。当社では対策プロジェクトチームを設立して、これまで具体的な施策について検討を重ねてきました。今後は、プロジェクトチームが出した最終答申を各地域の従業員や事業会社、協力会社の皆さんなどに説明していくことになります。来年の4月にやり残しがないように準備を進めていく重要な年ですね。

――  2024年問題対策のプロジェクトチームは、どのようなメンバーで構成されているのですか。

安藤  当社では2022年に輸配送戦略部という部署を設立していまして、そこが中心となって、グループ事業会社窓口や拠点戦略を担う物流管理部のメンバーや各支社に所属する配車や営業のスペシャリストなど、リーダークラスの人財を中心に構成しています。リーダーが各現場の意見を吸い上げ、それを持ち寄ってプランを考えていくという形です。

――  現場の意見を取り入れた実効性のある施策が検討されているのですね。

安藤  現場のことは全国にいる各現場リーダーや担当者が一番理解していますから。2024年の4月からは、トラックドライバーの走行距離や勤務時間が短くなるので、例えば解決策として中継輸送をするにあたっては、最適な中継点はどこか、どのルートのモーダルシフトを強化したらいいか、このルートなら船を使ったほうがいいのではなど、今は具体的な内容を詰める最終段階にあります。待機時間の削減やドライバーの職場環境の改善、事前出荷情報(ASN)を用いた検品レスの仕組みなど、さまざまな施策を準備しており、6月をめどに全体のプランを作り、そこから手直しを加えていくといったイメージで動いています。

――  2024年問題の解決に向けて、特に注力していることはありますか。

安藤  課題は色々あると思いますが、待機時間の削減は先立って取り組むべきだと考えています。労働時間のうち、どの部分を削減できるかを考えたとき、やはり構内待機時間がそれに該当します。無駄と言ってはいけないですが、短縮できるものは企業努力で実現しなくてはならないと思います。あとは、ドライバー不足の背景については長時間労働や、低賃金、高齢化など物流業界の構造的な要因、これが背景にあるのではないかと思います。2024年の法改正というのは、そういったものを改善する狙いがあって国も取り組もうとしているわけで、そこに対して私たちも理解し、現状を見据えた上でやれることをやっていくべきかと。そのうえで、当社自体がドライバーから選ばれるために魅力のある会社にならなければいけませんし、そのためには魅力ある荷物でなければいけないと考えています。

――  対策の1つとして庫内作業の省人化に取り組む企業も増えています。御社では三菱重工業と共同でピッキングと搬送の自動化について検証を進めていますが、自動化の取り組みについてはどのようにお考えですか。

安藤  事業継続性などの観点からもとても重要な取り組みだと認識しています。三菱重工業さんとは、キリンビバレッジの飲料倉庫でのピッキングの自動化を見据えて、2022年の11月からロボットを用いた実証実験を開始しています。私も実験現場を見に行きましたが、技術の進歩は凄いですね。現時点で実際の運用に耐えられるくらいのスピードはすでに実現できていて、技術の進歩を実感しました。

ただ、機械が故障などで止まってしまった時のことを考えると、急に人員を何十人も導入することはできませんので、予備の機械との2台体制にしないといけない等、細かなところから体制作りが必要ですね。機械に100%頼れる時代というのはまだまだ先かなと考えています。

一方で、リスクを恐れて何もやらないというのは違うと思っており、やれることから取り組んでいき、トライ&エラーを繰り返すことで知識と経験を積み重ねていく必要があると考えています。例えば、車両の電動化については、当社ではEVトラックの導入を検討しているのですが、充電ステーションをどこに設置すればいいかなどは、実際に運用してみないと分からない課題です。そうであるならば、まずは現場で実際に運用してみてどうなるのか試してみようと。現場が全てといった発想と同じですが、何事もやってみないと分かりませんよね。

――  DXや自動化、EV化など、2023年は御社にとって挑戦の年になりそうですね。

安藤  そうですね。これらは将来にわたって当社が成長するために必要なことですから。現状ではまだアナログでやっている部分が多いので、ロードマップを作って一つ一つ取り組んでいきたいです。

20230421 kirin7 - 物流最前線/KGL安藤 弘之社長インタビュー

――  ところで、考え事が尽きないお立場かと思いますが、普段の息抜きではどのようなことをされているのですか。

安藤  もう20年程になりますが、週末は少年野球の監督をやっています。チームの総監督をやりつつ、低学年のちびっこたち、幼稚園の年長さんから4年生までのチームの監督もやっているんです。週末はどんなに忙しくても、地域貢献も含めて子どもたちと一緒に野球をやって元気をもらっていますね。

――  ご自身も野球の経験があるのですか。

安藤  現在は少年野球の指導に専念していますが、東京本社や九州などにキリンの野球部があり、以前は監督兼プレイヤーでクリーンナップを打っていました。

――  少年野球の指導を始めたきっかけは。

安藤  息子が野球をやりたいと言って入ったチームを見学に行った際、みなさんボランティアでコーチングなどのお手伝いをしていたんです。自分が野球をやってきたのに、この子たちの手伝いをしないのはいかんだろうと思って始めたのがきっかけです。そこからずっと、今26歳になる息子が小1の時から続けていますね。

――  野球監督の経験が会社経営に生きたことはありますか。

安藤  子どもたちや保護者の方と接していると、時代の背景が分かりますね。今は中学受験をする子が多いので5年生になると野球を辞めてしまう子が多いのですが、そんな中でどういったチームが求められているかを考えると仕事に通じるものもあります。物流のドライバー不足も、野球の人口不足も、解決するには魅力が必要だということです。チームとしての魅力がないと、勝利至上主義だけでは駄目なんです。物流だって同じですよね、コストの削減だけを追求して仕事をしていたらみんないなくなってしまいますよ。

――  魅力あるチーム作りに必要なことは。

安藤  少年野球だと特に低学年でありがちなのですが、試合に勝つために体の大きい子を主力にするチームが多いんです。そのため、成長の遅い子はどうしても出場機会に恵まれない。そうした子に平等にチャンスを与えると負けてしまうことも多いのですが、私は負けてもいいんだと思っています。みんなで楽しくやって勝てればなおいいのですが、負けても楽しく野球をすることが一番なので、みんなに出場機会を与えるように心がけています。三振でもいいから、打席に立たせて経験を積ませてあげる。中学校くらいになってググっと成長する子もいて、そういったケースを人生の先輩として何度も見てきましたからね。

仕事も同じですが、やっぱりワクワクしたり楽しくないといけませんね。野球だって楽しいチームだから練習に行きたくなるわけで、職場だって同じことですよ、つまらない会社に行きたくないでしょう。勝利至上主義ではなくて、楽しく野球ができるチームだから行ってみたいと思う。職場にも当てはまる事だと思いますね。また、「とにかく決められた目標を達成しなさい」というだけではダメですね。自分の仕事が世の中にどう影響しているのか、社会の課題解決につながっているのか、そういう意義を感じないとモチベーションが続かないと思っています。まさにキリングループが取り組んでいるCSVの実行です。

――  野球も仕事も楽しむことが大事ですね。

安藤  子どもたちが楽しそうに野球をしているとこっちも楽しくなるんですよ。仕事も野球も楽しまないと。野球をしている時の子どもたちは悩んだり迷ったりしていないですからね。仕事で失敗してもクヨクヨしている場合じゃない、迷っている場合じゃないぞ、といった気持ちを子どもたちから学んで、仕事に生かしています。

20230421 kirin8 - 物流最前線/KGL安藤 弘之社長インタビュー

■プロフィール
氏名:安藤 弘之(あんどう ひろゆき)
生年月日:1967年5月7日
出身地:愛知県
~略歴~
1991年3月:駒澤大学 法学部卒業
1991年4月:キリンビール入社
2007年9月:キリンビール 広域流通統括本部広域流通5部長
2008年9月:キリンビール 近畿圏統括本部流通1部長
2010年9月:キリンビール 広域流通統括本部広域流通2部長
2015年4月:キリンビール 広域流通統括本部広域流通支社長
2017年2月:麒麟(中国)投資有限公司 法定代表人 董事・総経理
2022年3月:キリングループロジスティクス 代表取締役社長

(取材・執筆:齋藤康之)

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