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しがらみに縛られる日本の物流
なぜ標準化が世界で可能で日本で困難か

2023年06月23日/物流最前線

<標準化が課題と語る廣島社長>
20230620nx8 520x346 - 物流最前線/NX総研・廣島秀敏社長トップインタビュー

<倉庫作業分析ツール「ろじたん」>
20230620nx9 520x184 - 物流最前線/NX総研・廣島秀敏社長トップインタビュー

自動化は標準化がカギ
世界では動じない精神必要

――  今、日本の物流事業は大きな変革期に来ていますね。

廣島  そうですね。この4月末に欧州で「LOGI MAT」、米国で「PRO MAT」という倉庫内作業の展示会がありました。当社からも視察者を派遣しました。ハードウェア自体は2018年に比べて大きくは変化はないようですが、ソフトウェアの改良が進歩していたようです。以前は効率化を目指す動きでしたが、今は各業者とも間違いがないようにするというところに力点を置いて開発しているようです。さらに人件費が高騰する欧米ですので、全自動化を目指していました。出展者にアンケート調査をしたらしいんですけど、後3年すれば全自動化できるとした企業が2~3割、後5年くらいが6割程度ということで、5年以内に9割が全自動化できると回答していました。しかし、これは欧米のように標準化が進んでいる作業だけだと思っています。日本はまず無理だと思います。荷役作業では、アフリカで一般の電話より携帯電話の普及が早く進んだというふうに、一挙に変化が進むという形にはならないものと思います。物流ではどうしても物理的な作業があるので、一足飛びに自動化はできない、まず標準化の上で機械化が進み、その後で自動化に進むと思います。

――  やはり標準化が障害ですか。

廣島  先ほども申しましたが、物流では伝票やパレット等が業界ごと、個社間での違いが顕著で、それが電子化、機械化、自動化を阻んでいますから、標準化ができなければ、益々欧米との間で、差は開いていくでしょうね。

――  確かに日本でもドローン物流やトラックの自動運転もレベル4等の実証試験をやっていますが、あれが街中に入るなんて当分無理だろうと思いますね。

廣島  2024年問題は待ったなしですからね。米国のフリーウェイだと大西部を100㎞前後出して走り、トレーラーを切り離して、別のトレーラーをつないで走りますから、待っている時間もないし、生産性が高いですね。なおさら自動化も進んでいくと思いますが、国内の道路事情を考えても、日本ではもう少し工夫していくことが必要でしょうね。

――  さて、様々な国で物流事情を経験されてきたわけですけど、もう駄目だ、みたいなことってありませんでしたか。うまく乗り越えられたから、今ここにいらっしゃるとは思いますが。

廣島  多分、普通の日本人なら困ったことはいっぱいあったと思いますが、私自身は最初の長期出張がイラクでしたので、どこでも大丈夫という感じですね。感覚が鈍いということもありますが、意識せずに受け流すというか、いやなことはすぐ忘れること。思いつめると「もう駄目だ」という意識になりますからね。結果として重要なことも聞き損ねたり、忘れてしまったこともありましたが(笑)。

――  常識も風習も違う海外でビジネスをやっていくには、あまり気にしないということですね。

廣島  そうです。気にしないことです。気にしないで、重要なことだけに耳を傾けることです。全てに気配りしていると、それはそれで大変ですよ。

――  ストレス発散法は。

廣島  珍しい食材で料理することもありますし、ここ数年は、小動物を飼っています。メダカとか川エビを採ってきて、ビオトープ(生きものの暮らす場所)を作って、それをぼうっーと眺めています。ちっちゃいプラスチックの池ですが、そこに毎年カエルがやってきて、卵を産んで、それが孵って、いつの間にか小さなカエルが増えて、どこかに行ってしまう…それを見ているのが好きですね。

――  生き物を飼うのが好きだったのですか。

廣島  そうですね。小中学校のころは昆虫とかも好きでしたね。でも、飼い方を知らなかったので昆虫はすぐに死んでしまいました。鳥のサギが怪我していたので捕まえて、毎日小魚やタニシを採ってきて与えたり、怪我が治るまで飼い続けました。弱ったカワセミを拾ったこともありましたが、これは死んでしまいました。カラスも飼っていたことがあります。とてもなつきましたね。餌を与えているからでしょうが、すごく私になついていました。親からはカラスは縁起が悪いから捨てろって言われましたが、放り投げても戻ってきましたね。

――  海外の動物での想い出は。

廣島  中近東では牧羊犬が印象に残っています。これが実に忠実な犬で、バグダッドから工事現場に向かう途中、バスが羊の群れの近くに来た時に、その牧羊犬は羊がバスに襲われると思ったのでしょうね、そのバスに体当たりして死にました。羊を守るためにしたその行動に、犬はすごいなと感じました。命がけということは考えてないでしょうけど、実に忠実な犬でしたね。

――  ところで海外では食べ物関係で困ったのでは。

廣島  当時、イラクではお酒は飲めました。他のアラブ諸国では禁止されていましたからね。私のいたモス―ルでは、ドイツとイタリアの合弁企業が土木の仕事をしていて、そこがスーパーマーケットも経営していたので欧州からの輸入食材を調達していました。イラクで吃驚したのは、焼きトマトでした。それまでトマトは生で食べてましたので、焼いて焦げたトマトは初めてでした。イラクではあまり困った記憶はありませんが、不気味だったのは生卵が3、4か月たっても腐らなかったことです。放射線で防腐処理してあるんじゃないかとか、有精卵で生きているからじゃないかとか、でも生きてたらひよこになるんじゃないかとか、いろんな説がありました。イギリスではロー・ベジタブル・サラダ、生野菜サラダです。普通のキャベツやトマトなどを想像して注文したところ、カリフラワーやインゲン豆など普通ゆでたり、煮たりする野菜が生でした。あとは、マケドニアでは肉料理ばかりで、毎日ソーセージやハム、串焼き肉で、これを一週間も食べていると血管が詰まりそうで嫌になりました。

――  さて、最後になりますが、NX総研について簡単にご説明ください。

廣島  NX総研は1961年に設立されました。それから約62年、現在私を含めて69名の社員が在籍しています。顧客の分類としては、その時々により左右されますが、NXグループ会社が4割、一般企業も4割、そして残りが官公庁といった感じです。仕事の構成としては、コンサルティングが4割、調査・分析統計関係が3割、教育が3割程度です。日本各地の大学にNX総研出身の教育者がいますし、物流に関する調査、コンサルティングなら、何でもご相談いただければと思います。

廣島社長のブログから物流業界に働く魅力とは 新社会人に向けたメッセージより

物流では、倉庫内の作業工程や輸送モードがいろいろとあり、その組み合わせで成り立っていることで、ある意味自由度が高いと考えます。また個別の作業工程や輸送モードそれぞれで生産性を上げれば全体が良くなるというものではなく、全てのパートをギクシャクしないように連動させること、欧米ではオーケストレーションといいますが、オーケストラで各楽器パートをハーモナイズさせるイメージで各輸送モードから荷主も含めてロジスティクス全体を無駄なく連動させることで最良の状態ができます。物流業界へ入られた皆様には全体で効率よく物流を構築することの難しさと、それを実現するときの面白さに興味を持って取り組んで頂けたら幸いです。そして、皆さんにもハーモニーやリズムを乱すことなくロジスティクスをオーケストレーションすることの醍醐味を味わっていただきたいと思います。

取材・執筆 山内公雄、近藤照美

<廣島社長>
20230620nx10 520x347 - 物流最前線/NX総研・廣島秀敏社長トップインタビュー

■プロフィール
氏名:廣島 秀敏(ひろしま ひでとし)
生年月日:1961年11月19日
1984年4月:日本通運 入社
海外プラント輸送支店 配属
1985年5月 エジプト出張(1カ月)
1986年2月 イラク長期出張(1年)
1987年3月 横浜海運支店輸入課 異動
1988年10月 海外業務研修(1年)
1992年2月 ロシア極東出張(2カ月)
1993年2月 ロシア極東出張(1カ月)
1996年5月 国際輸送事業部複合輸送グループ 異動
人道援助物資輸送担当
アフリカ各国出張(南アフリカ、ジンバブウェ、マラウィ、モザンビーク、エチオピア、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、カメルーン、中央アフリカ、ベナン、コートジボワール、ブルキナファソ)、タイ・ラオス、ウズベキスタン、コソボ・マケドニア・ブルガリア・ギリシャ・トルコ
2001年5月 ドイツ日通 出向 ロジスティクス担当課長
2005年10月 兼欧州開発室 ロジスティクス担当次長
2009年11月 日本通運 海運事業部複合輸送担当次長
2011年10月 同社 海運事業部複合輸送担当専任部長
2013年5月 オランダ日本通運 出向
ロジスティクス部長 兼 海運貨物部長
欧州海運貨物部長 兼 欧州ロジスティクス部長
2018年4月 日本通運グローバル・ロジスティクス・ソリューション部長
2022年1月 NX総合研究所 代表取締役社長
(現在に至る)
■NX総合研究所
https://www.nittsu-soken.co.jp/

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