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英国規格協会/サプライチェーン内輸送中の盗難で食品が増加

2024年03月19日/SCM・経営

業務改善とISOなどの規格開発を推進する英国規格協会(BSI)は3月19日、サプライチェーンを構築・維持していくうえでのリスク要因を分析した「サプライチェーンリスク・インサイトレポート2024」を発行した。

それによると、食品は引き続き世界のサプライチェーンにおいて最も盗難リスクが高い商品とし、今やハイジャック(盗難)事件全体の3分の1を占め、2022年比で29%増加している。世界的にインフレの影響が続く中、これらのデータは、窃盗犯が大幅な価格の上昇を受けた生活必需品を標的とする傾向が強まっていることを示唆している。

BSIの分析によると、食品・飲料品は現在、盗難被害全体の22%を占めている(2021年から14%、2022年から17%増加)。農作物の盗難も10%に上昇し、今やハイジャック事件の10件に1件を占めている。また、電子機器の盗難件数は横ばいで、高額商品が引き続き盗難の標的になっていることが浮き彫りとなった。

食品は、高額商品と比べると追跡装置や盗難防止技術が使用されていない傾向が強いため、輸送中の盗難が比較的容易に行えると考えられる。2023年に発生した顕著な例としては、ギリシャで52トン以上のオリーブオイルが盗まれた事件や、クリスマス前にスペインで200本のハムが盗まれた事件などがある。高額商品に関しては、昨年、エジプトの窃盗団が偽造書類を使用し、架空の薬局名義で医薬品を買い付け、970万米ドル相当の医薬品を不正に横流しするといった、注目すべき事件が多発している。

盗難の種類は変化しているが、貨物の盗難は依然多く、このレポートではこのリスクを軽減するためにスマートテクノロジー・ソリューションを活用することの重要性を示唆している。貯蔵施設からの盗難は減少(26%→21%)しているが、コンテナやトレーラーの盗難(4%→14%)、従業員の持ち物、トラックの部品、現金の盗難(7%→10%)は増加している。盗難が最も多いのはヨーロッパ(37%)で北米(23%)が続く。2023年における盗難のほぼ10件に7件(68%)がトラックの被害によるものだが、暴力的なハイジャックは北米と南米で多く発生している。一方ヨーロッパでは駐車中のトラックを狙う窃盗団が多く、これは安全な駐車場がないことやドライバーの休憩に関する要件が原因となっており、被害内容は地域によって異なる。

このレポートでは、組織が優先的に取り組むべき課題として、以下の6点を挙げている。

1. 協業への意欲は、組織が今日のサプライチェーンの課題によってもたらされる機会を発見するのに役立つ。どの組織も単独では成長を加速することはできない。

2. リスクの性質の変化を認識することは、組織がさまざまな事態に備えることを可能にし、大きなチャンスを引き出す可能性がある。

3. データと実用的な洞察力によって、リスクに対する積極的なアプローチをとることで、脆弱性を管理し緩和することができる。これらのインサイトは、今日のサプライチェーンの課題を解決する手段となる。

4. 地政学的に不確実な時代には、機敏で適応力のある考え方で刻々と変化する世界情勢に取り組むことが重要。

5. 気候変動に関連する事象を360度の視点からとらえることは、将来のオペレーションに役立つ可能性がある。極端な気候変動の「新時代」には、新たなアプローチが必要。

6. 急速に変化する法規制に先手を打つことで、サプライチェーンにおけるコンプライアンス含め、競争上の優位性を確保することができる。

BSIのJim Yarbroughサプライチェーン・ソリューション担当グローバル・ディレクターは「食品と飲料は、サプライチェーン内での輸送中に盗まれる商品の上位を占めている。このような商品は常に需要が高く、インフレ要因により過去数年間は急激な価格上昇が続いている。現代のグローバルサプライチェーンが直面する課題によりよく対処するため、サプライチェーンリーダーはサプライチェーンインテリジェンス・ソリューションを最大限に活用することにより、プロアクティブで強固なサプライチェーンリスク管理戦略を実施することができる。同様に、世界的なパンデミックとそれに続く地政学的、経済的課題という共通の経験からは、単一の組織だけでサプライチェーンマネジメントを処理することは不可能であるという学びがあったと思う。コラボレーションが絶対的に必要」とコメントしている。

■サプライチェーンリスク・インサイトレポート全文(英文)
https://www.bsigroup.com/ja-JP/our-services/consulting/supply-chain-risk/report-2024/

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