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物流はもっと魅力的になれる
パートナーとして成長目指す

2022年10月17日/物流最前線

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今年の2月にDHLサプライチェーンのシンガポールクラスターから日本・韓国クラスターの担当CEOに就任したフランス国籍のジェローム・ジレ社長。当初は日本独特の働き方に戸惑ったと言うが、現在では、徐々に慣れ始めたころとのこと。ビジネス面では、前任者の自動化、ロボット化をより一層深化させ、新たにヘルスケア部門、ファッション部門、リテール部門に力を注ぐ決意だ。環境問題、人手不足等さまざまな課題が山積している物流業界に対し、「物流はもっと魅力的にならねばならない」と言い「同じ価値観を持つ企業と一緒にビジネスを成長させる」というポリシーを貫くジェローム・ジレ社長。今後の日本市場での取り組みについて伺った。
取材:9月30日 於:DHLサプライチェーン本社(品川)

<ジェローム・ジレ社長>
20221014dhl2 - 物流最前線/DHLサプライチェーントップインタビュー

コロナ禍で来日、働き方の違いに驚く

――  日本・韓国CEOへの赴任は2022年2月のコロナ禍真最中の時でしたね。

ジレ  香港やタイ、シンガポール等のAPAC(アジア太平洋)の国々で仕事をしており、直近はシンガポールクラスターCEOでした。日本・韓国クラスターの正式就任は2月でしたが、新型コロナの影響で実際の来日は3月末にずれ込みました。

――  まだまだ日本ではコロナ終息には遠いですからね。このような世界的なコロナ禍の中ですが、御社にとっての影響はいかがでしたか。

ジレ  コロナ禍というのは、確実に様々な人々に多大な悪影響を与えた出来事で、決して良いニュースではありません。しかし、物流ビジネスという観点から見ると、コロナ禍だから生まれたチャンスというものもありました。例えば、DHLでは、世界各国にワクチンの輸送を行っていますが、それがビジネスの拡大につながっている面もあります。日本国内でも、抗原検査キットの倉庫内での作業や配送等でビジネスの拡大につながっていると言えます。コロナ禍でのピンチをチャンスに変えた一面です。ただ、一方で、社員の9割が現場で勤務しており、エッセンシャルワーカーとして、テレワークもできないという困難な状況に置かれていました。現場の社員は困難な状況に置かれており、会社として彼らのために職場の安全性を確保することが重要でした。

――  当初は混乱したと思いますが、対応策としてはどのようなことを。

ジレ  当社では世界中どこに行っても同一のオペレーションが担保でき、プロセスが標準化されていることがコロナ禍において大きなメリットになりました。多くの企業の場合、初めてのコロナ禍という惨事に戸惑い、混乱し、困難が大きかったと思いますが、当社はプロセスの標準化やBCP対策が従来から図られていたため、迅速でスムーズな対応を図る事ができました。顧客にとって、DHLを利用することが大きなメリットになったということが明らかとなったものと自負しています。

――  逆境をばねに変えたということですね。

ジレ  会社として「ストラテジー2025」という戦略がありますが、この戦略に基づいてやってきた結果、コロナ禍という大きな社会的危機の中でも力強く成長できたものと思います。もちろん、不確実なこと、不安なことはありますが、会社の成長は止まることがありませんでした。

――  さて、日本に来られてから約8か月。これまでと違うようなことはありましたか。

ジレ  当初、日本はAPACのいずれの国とも「働き方が違う」ということを強く実感しました。そのため、日本的な働き方に自分を合わせていくのが非常に大変でしたが、日本には優秀なスタッフが多く、数か月で慣れてきました。この間も、250人のマネージャーを集め、マネジメントカンファレンスを行い、まだまだ成長できるという確信を得ました。

――  「働き方が違う」とはどのような点でしょうか。

ジレ  そうですね。何かを決めるときの過程が大きく違います。日本では、慎重に時間をかけて、問題点を洗い出し、詳細なプロセスで検討して、実行するパターンです。まさに検討しつくして実行に移すのです。私は、これまでスピード感というものを大切にして、間違いがあってもとにかく進め、考えながら走るというパターンでした。このスピード感の違いには戸惑いました。どちらが良くてどちらが悪いといったものではなく、やり方が違うんですね。日本の良い点は実行するときにはほぼ検討しつくされているので、確信を持って進められることです。

――  働き方で2つのやり方をマスターしているわけですね。

ジレ  まだまだ慣れつつあるところですが、新しい物事に触れて、学んでいる最中です。自分にとって居心地の良い場所ではなかなか学びは少ないですからね。学ぶことができる日本に来て、それができることに自分のエネルギーが沸き上がっている感じです。前よりも若返ったと感じています。日本に来て辛抱強くなったことも、将来的に自分自身の強みになっていくものと思います。私の妻が日本の文化を学ぶ中で「頑張ります」という言葉を学んだと。私は結構頑固なのですが、この頑張るというのは、きちんと正当な理由があって頑固に努力を続けていくことなのですね。あきらめずにやっていくということです。まさにNever Give upですね。正しい方向に突き進むということで、社員にはよく、ビジネスは短距離走じゃないよ、マラソンだと言っています。粘り強くやっていくことが重要ですから。

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