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政策パッケージで物流は変わるか
海外の視点も交え徹底解説

2023年07月05日/物流最前線

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6月2日、「物流革新に向けた政策パッケージ」が、我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議から公表された。NX総合研究所(以下、NX総研)大島弘明常務は、その前段階から物流現場での調査や実証実験に携わり、昨年から「持続可能な物流の実現に向けた検討会」にも委員として参加するなど、対策を練ってきたご意見番だ。一方、海外駐在経験が長い同社の廣島秀敏社長によると、「2024年問題は日本独特のもの」だという。単純に比較できるものではないが、日本でドライバーの働き方改革がなぜ「問題」とされるのか。大島常務と廣島社長に、政策パッケージのポイントについて解説いただき、海外の視点も交えながら、2024年問題への対応策などについて聞いた。取材日:6月14日 於:NX総合研究所本社

<大島常務>
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Point. 1規制的措置が導入
物流負荷低減が義務化される

――  6月2日に「物流革新に向けた政策パッケージ」が出されましたね。大島常務はどのような印象をお持ちですか。

大島  物流に対する施策は既に『総合物流施策大綱』を含めこれまでいろいろとありますが、今まであまり触れられていない項目についてもパッケージのなかには入っています。そういう点において、今後必要なことを改めて整理し強調したうえで、規制的措置が加わったことが特徴だという印象です。

――  政策パッケージには、昨年9月から行われていた「持続可能な物流の実現に向けた検討会」(以下、検討会)の内容も反映されているのでしょうか?

大島  もちろん反映されていると理解しています。5月には最終取りまとめの案が出ていますから、そこに書かれている内容は相当数、政策パッケージに入っています。特に対荷主に対する規制的措置を入れるということに関しては、そもそも検討会の方でも最終的なアウトプットの一つとして議論してきたもの。それぞれの会議体は別ですが目指すべきところは同じですから、整合性は取れているのかなと見ています。

――  大島常務、政策パッケージ全体のポイントはどこでしょうか。

大島 「規制的措置」というのがやはり一つのポイントだと思います。政策パッケージの頭書きの部分で「中長期的に継続して取り組むための枠組みを、次期通常国会での法制化も含め確実に整備をする」と明記しています。法制化というところは大きなポイントにはなってくると思います。

――  これは、今までにない動きでしょうか。

大島  ないですね、物流に関しては。検討会においても、荷主や産業界側、社会が、物流に対して義務的に何かをしなくてはいけない、というような枠組みは今までないということが議論されました。ガイドラインや手引きはありますが、あれは義務も何もない、それをやらなかったら罰則があるなど、強制力が全くなかったんです。

――  今回一歩、踏み込んだということですね。

大島  検討会でも、経産省と国交省、農水省も含めて行政自体が、今まで物流効率化に向けていろいろな取り組みはしてきたなかで、義務化があるものは全くなかった、という話が出ました。これでは物流改革は進まない、なおかつ2024年で本当に輸送できないとなると一番困るのは経済社会。そういう点で2015年からトラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会を開催するなど、実は国が一番危機感を持って対策を進めてきていたと思います。

――  来年の国会で法案が出されて、新しい法律ができるのですか?

大島  全く新しい法律ができます。ただ、参考にしているのは、省エネ法を参考にした法律の枠組みということになります。省エネ法というのは、CO2 の排出量を企業ごとに算出し、それを少なくしていくような取り組みをしてくださいというもので、特に大手事業者が対象となっています。新しい法律も、物流効率化、生産性の向上に向けて、荷主が計画を作り、それに向けて着々と歩みを進めてください、というものになると考えられます。

――  「自主行動計画」ですね。

大島  そうです。ただこれは事業者がやるべきもので、業界としての自主行動計画とは異なると思います。とにかく荷主側が動かないと、実は物流の現場は動かないんです。

――  法律となると、遵守していない場合は罰則があるわけですね。

大島  罰則は入ると思います。

――  対象は大手荷主、というふうに絞られているのですか?

大島  そこは今、議論中です。これから行政のほうで本格的な制度設計が行われると思います。ただ制度設計に向けて、これまで既に検討会の中では大きな枠組みを示していて、荷主側、運送事業者も含めた、「荷主」のなかに、大手運送事業者もおそらく含まれるのではないかと。元請けは発荷主ですから、そこも含まれることになると思います。

検討会で皆さんの意見を聞いていると、総論賛成なんです。ですが、大手にだけ枠組みをかけても、例えば商取引の中では、大手メーカーも中小から仕入れをしていたり、中小も例えばさまざまな卸業者に販売していたりということがあるので、中小も対象にしないと片手落ちなんじゃないかという意見も出ています。そこの部分を含めてどうするのか、これからの制度設計の難しいところではないかと思います。もちろん、どこかで一回、線は引かざるを得ないと思います。その線が、中小まで入れるのかどうなのか、大手だけでやるのか、そこはまだ見えないですね。

―― なるほど。廣島社長、海外ではこうした物流(荷主)への規制などについて法整備は進んでいますか?

<廣島社長>
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廣島  労働関係の法律はかなりあると思います。特にヨーロッパの場合では、作業員に30キロ以上のものを持たしてはいけないとか、あとは、基本的にはトラックは全部パレットで降ろしています。

――  海外ではドライバーは、荷役はしないのですか?

廣島  ええ。例えば「エクスワークス」(工場渡し)でいうと、本当は倉庫の中に置いてあるモノをドライバーが積むという条件なのですが、やはり危険があるからとか、倉庫の中で部外者に立ち入らせて作業をやらせたくないとかで、倉庫側が積むという習慣になっていることもあります。

――  ドライバーは、法律や労働組合で守られているんですね。

廣島  そうですね、守られているのもあるでしょうし、ドライバーや業者側もはっきりと主張します。「それはわれわれの仕事ではないはずだ」とか、アメリカなんかもそうです。日本人はたぶん辛抱しすぎているところがあるのではないかと思います。

大島  そこは、荷主と物流事業者の需給バランスでしょうね。

廣島  それはあるでしょうね。

大島  規制緩和以降、運送事業者の数が4万社から6万社強まで、1.5倍ぐらい運送事業者数が増えたものの、その間の営業用トラックの貨物輸送量は1.2倍ぐらいしか増えていない。供給過多により限られた荷物をみんなで取り合いになったのです。

――  それはこれまでの話ですね。

廣島  そう、これまでの話。

大島  でも今、冷静に見たら、ドライバー不足によって本当は需給のバランスは逆転していると私は思っています。6万社強の運送事業者数は、この20年ぐらい減っていませんが、中で働いているドライバーの数はもう減っていますからね。そしておそらく、これからも減っていくでしょう。新しいなり手がなかなかいないですからね。

廣島  大島さんの知り合いの運送会社では、社長自らトラックに乗っているそうですね。

大島  そう、ではなぜ今運べているかというと、相変わらずドライバーは長時間労働で、ドライバーから管理者側になった人も、ドライバーが足りないから走っているんです。20年来の付き合いの社長も、「それまでの週1回から今は週2回走っている」と言っていましたね。本当に厳しいなかで努力をして、無理をしながらでも運んでくれているんです。働き方改革により、来年からはその無理ができないわけですから、結局運べなくなってしまうということが起きかねない。

――  そうですね、これが2024年の大きな「問題」。

大島  今後、運べないということが出てきても、コンプライアンス上で「もう仕方がない、断るしかない」となれば、立場は完全に逆転します。荷主さんが断られてしまうわけですから。では、どこか運んでくれるかといえば、その「どこか」はなかなか見つからなくなるのではないかと思います。その辺の構造はもう変わってきていると思うので、私は運送事業者さんには「赤字の仕事はいつまでやっても赤字」だと、「労働時間が長い仕事をいつまでやっても労働時間は長いから、そのような条件の合わない仕事というのはやっぱり考えるべきですよね」という話をさせていただいています。荷主さんには「これから断られる可能性がありますからね」と、最近はしっかり言っています。

Point.2荷待ち荷役時間
2時間以内ルールへの対応

<物流革新に向けた政策パッケージのポイント(内閣官房HPより)>

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――  政策パッケージでは、具体的な施策として「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」の3つの柱が掲げられています。これらについてはガイドラインも示されていますね。

大島  そうですね、ガイドラインについては2025年までの間、つまり来年、法律ができて施行されるのは早くても25年ですからその間、何もしないのではなく、これをやりましょうというものです。これまで通り、ガイドラインではあるものの、意味づけとしては、新しくできる法律のバックヤードとなるものです。

――  荷主や物流事業者は、何から取り組めばいいのでしょうか。

大島  例えば労働時間をこれだけ短くさせます、などKPIのベースになる考え方も示されていますので、やはりそこに取組みながら、将来、法律ができるまでの間でも、特に荷待ち時間や荷役時間の削減などへの実際の対応や、その他の改善策に向けた準備をする必要があるでしょうね。何もしなければ、「仕事を断られました」「輸送してもらえなくなりました」という最悪のストーリーも。困るのは荷主であり社会です。

――  なるほど、期待される効果(2024年度分)では荷待ち・荷役削減についてガイドラインでは「2時間以内ルール※」が示されました。これは可能な数字ですか?

大島  現場を見直すことで可能性は結構あると思っています。実際に、以前ある企業のコンサルとしてお手伝いをしたこともあり、荷待ち時間の問題は、現場の工夫でかなり短くできます。例えば、1日30分短くして20日間稼働、それだけで月間10時間短くなります。

よく国交省でも使われているデータによると、荷待ちのある運行のうち拘束時間が約12時間30分、その1時間34分が荷待ちで、1時間29分が荷役時間、合わせて約3時間。それを1時間目安に減らして2時間にしてくださいということが求められているとき、仮に積む時に30分、降ろす時に30分、それぞれの荷待ち時間を削減できたら、それだけで大きいですよね。

<平均拘束時間の内訳(国交省HPより)>
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廣島  でも何か所か降ろすとなると、2時間は厳しいかもしれない。まだいろいろありますね。

大島  確かにそうですね。1か所積み、1か所降ろしだと分かりやすいのですが、全体で減らさなくてはいけないという点においては、やはり発荷主でも着荷主でも、基本的に待たせない仕組み、待たせない工夫が必要です。今までは「8時にみんな持って来い」と言われればその通りに行かざるを得ず、ドライバーも待つのは当たり前という現場が多かったのではないかと。でもその積み重ねが、長時間労働になっている要因になっているわけですから。

――  予約受付システムの導入も有効でしょうか。

大島  予約システムを否定するつもりは全くありませんが、例えば8時にトラックが20台来ている現場で、1時間に降ろせるのは5台だとしたら、「5社までは8時、次の5社は9時、次の5社は10時に来て」と指示してもらえればいいんです。そこまで厳密でなくても構いません。今まで8時に行って10時まで待っているドライバーからすると、最低でも2時間は荷待ちが減りますよね。そういう対応は、現場で「待機時間を短くするためにはどうすればいいか」という問題意識があればできる話。我々がコンサルとして入って、実際にやってきた経験則上、できると思っています。

――  そうするとまず、システムを入れる以前に、現状荷待ち・荷役にどれぐらい時間がかかっているかを社内で洗い出すということですか。

大島  もちろんそうです。我々も現場の労働時間に関しても、あるいは運賃料金に関してもきちんと「見える化」しなくてはいけないと、常に思っています。自分たちの実態がどうなっているのか分からなければ、お客さんに交渉もできません。実際、お客さんに「荷待ち時間が実は1日平均これだけかかっています」と、「長い日でこれだけ、短い日でこれだけかかっています」と示さない限り、お客さん側も問題意識が高まらないし、対応まで進まない。でもそれは実際に相当数、現場では時間把握ができていないと思います。

――  検討会では、デジタコの義務化という話も出ていましたが。

大島  私は「デジタコを入れているからうちは大丈夫です」という社長さんにたくさん会いましたが、「荷待ち」というボタンをセットして、押させるという行為をしない限り、デジタコは車両が止まっている時間しか分からない。あるいは後から追記で日報上書かせるとかしないと。そこまでしているところは極めて少ないので、「本当に荷待ち時間はどれだけあるんですか」という時に、データが出てくるケースは極めて稀でした。

結果として、多くの現場で「見える化」は、進んでいないので、そのためのツールは必要だとは思います。いろいろなメーカーさん、サプライヤーさん、システム屋さんが、時間管理というようなソフトを出していますし、当社も『どらたん』というシステムを出していますので、ぜひ活用していただきたいですね。

――  「見える化」は必須ですね。

大島  運送事業者は自助努力としてまず行うべきでしょう。それらをベースに、きちんと荷主に対し提案、交渉を、運送事業者からしなくてはいけないと私は思っています。荷主側には、「今度、提案があったらきちんと受けてくださいね、下手に受けないことがあると、さっきの公取みたいな話に最終的にはつながりかねませんよ」「本当にそこで拒否したら、もう仕事を本当に断られるかもしれませんよ」と言わせてもらっています。

※荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ル-ル
ガイドラインでは、荷主事業者は、物流事業者に対し、長時間の荷待ちや、運送契約にない運転等以外の荷役作業 等をさせてはならない。 荷主事業者は、荷待ち、荷役作業等にかかる時間を計2時間以内とする。あるいは既に2時間以内となっている荷主事業者は、目標時間を1時間以内と設定しつつ、更なる時間短縮に努める。 また、荷主事業者は、物流事業者が貨物自動車運送事業法等の関係法令及び法令に基づく命令 を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない。

Point.3役員クラスの統括者
物流は経営課題そのもの

<廣島社長(左)と大島常務>

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―― 改めて、2024年問題の影響についてNX総研ではどう分析していますか。

大島  第3回検討会で資料として提出しましたが、2024年問題の影響について定量的に試算したところ、営業用トラックの輸送能力は2019年をベースに14.2%不足し、輸送トン数として約4億トン不足をするという結果になりました。さらに、そもそもドライバー不足が今回24年問題において1つのポイントになっていて、これが今後も続いていくと、2030年には輸送能力の19.5%(5.4億トン)が不足すると推計され、 2024年問題の影響(2024年時点)と合わせて、営業用トラックの輸送能力の34.1%(9.4億トン)が不足する可能性があります。そうならないに越したことはないのですが、なるかもしれないという危険性を警鐘する意味においては、一定の意味を持つ数字ではないかと思っています。

―― 特に輸送力が不足する地域などありますか。

大島  長距離輸送において特に運べない可能性が高く、地域別に見ると一番高いのは約20%で中国地方、2番目が九州、3番目が関東。業種的には一番高かったは農水産品です。これは長距離輸送が多いことが一因と考えられます。

――  30%運べない、となると経営にも影響しますね。社内の中で物流について経営陣が知らない、というケースもあるという話を聞きますが。

大島  そうなんです。従って政策パッケージの「荷主・消費者の意識変容」で、役員クラスの物流管理統括者をきちんと置きなさいというのも、その対応ですし、有識者からの評価が高いですね。メーカーさんにしても卸さんにしても、必ず発荷主と着荷主の両方の顔を持っているんです。だから会社としては、そこはきちんと両方を見て、「うちは着としてこんなことやってしまっている」みたいなことが見えると、より効果が生まれるのではないかと思います。

――  役員クラスを置くことで、部署ではなく会社の課題として対応しなければならない、ということですね。

大島  「役員クラス」として物流改善をしていく、それを責任持ってやるということが、経営の一つの課題になると、経営者の判断によってそれをやっていくんだ、ということがやはり大きな意味を持つことだと思います。今までは物流の問題は現場に任せていて、どうにかこなせてきたんですよ(笑)。それがどうにかならないかもしれないので、きちんと会社の中で物流を一つの柱として、物流が成り立つ生産から販売までの仕組み、卸でいえば仕入れから販売までの仕組み、というものを考えていく必要が出てきた、ということの現れだと思います。

――  トップの判断が重要になる。

大島  本当にその通りだと思います。

廣島  リードタイムを1日延ばすだけで在庫がもたないというと、全体に影響してしまいますからね。

大島  今までは物流が回ったから在庫を最小限で済ますことができたものの、輸送のほうが回らないとするならば今度は在庫を増やすといった、その時その時の状況によって変えていく、柔軟に対応していくという目線は必要だと思います。ただ、荷主さんからすると、結果的に物流コストが上がってしまうということは、したくないですよね。長い間、物流費というのは対前年マイナスというが、命題とされるわけで。でもこれから先は物流費も上がる可能性がある、というふうに私は言わせていただいています。

――  日本では物流費を抑えることが評価される、海外では社内や社会での物流の立ち位置、というのはどうなんでしょうか。

廣島  そうですね。ドイツとかでも運送業者はある程度のレベルの社会的な地位はあります。さっきの話で、物流費が上がっていくのは良くないと思われますけど、ドイツなんかはちゃんとKPIを出して、上がっていても生産性が高まっているかどうかというのを組み合わせて、同じ単価でもより多く早く運ぶとか、そういうふうな効果が出ていれば料金は別に上がっても、それは普通だねということで荷主も捉えています。

――  日本とはずいぶん違いますね。

廣島  私がいた倉庫も、小口の混載ですがトラックの待ち時間はなし。トレーラーをぐるぐる回すだけ。例えば1時間毎に1台空トレーラーを持ってきて実入りトレーラーを引き取っていく、これを一日8時間繰り返して、待ち時間なしに空と実入りのトレーラーを運び続けていました。トラック業者も、うちの倉庫に来てから効率が上がるのを倉庫側としても調べて、トラック事業者側もその内容は分かっているので、効率が上がった分、倉庫側の我々としては料金を下げていく。彼らとしても効率が上がると収入が増えるので、その分多少引いてもいいかなという形で交渉できる。

――  交渉しやすい環境があるんですね。

廣島  お互いの理解ができていますので、交渉はしやすいですね。トラック事業者も「待たされた」とか、「ちゃんと積んでくれるけど量が少ない(運賃収入が少ない)」とか、そういうことは必ず言ってきますし。だったら見直しをするんだと。上げる方向は上げる方向に。でもお互い納得しやすい。それは数字でちゃんと話すようにしていますから。そこが日本とだいぶ違うなという印象はありましたね。

大島  昔からヨーロッパでもドライバーさんは、デイリーログ(日報)をきちんとつける。これもたぶん日本に比べてかなりきちんとつけています。自分がやったことをベースに賃金が支払われるわけですから、そういう意識も、日本に比べれば欧米のほうがしっかりしているようで。国民性や、考え方の違いということで、いい悪いではないと思いますが。

廣島  そうですね。よく日本だと、「サービスとして」「値引きして」と言いますが、サービスというのは必ず対価が伴うものだという認識が欧米はちゃんとある。サービス業というと目に見えないですから、何かの数字にしないといけない。彼らはそういう理解があって、自分がこれだけやったというのを、きちんと記録を取っていると思いますね。

後編へ続く。

取材・執筆 近藤 照美

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